『原点 THE ORIGIN(ジ・オリジン)』 安彦良和、斉藤光政著

レビュー

9
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原点 戦争を描く、人間を描く

『原点 戦争を描く、人間を描く』

出版社
岩波書店
ISBN
9784000611923
発売日
2017/03/10
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『原点 THE ORIGIN(ジ・オリジン)』 安彦良和、斉藤光政著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

反骨精神に富む創作者

 ♪アムロ、ふりむかないで……言わずと知れた、初代ガンダムの歌のフレーズである。「ガンダム世代」のはしくれに属する私も、かつてテレビアニメでこの歌をよく聞いていた。プラモデル(ガンプラ)も作った。しかし、当時は、二大勢力の対立、大量破壊兵器の使用といったガンダムの設定が、冷戦期特有の世界観に基づいていることを分かっていなかった。安彦良和氏が漫画化した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を最近読み、ようやくこの作品の背景や深みを理解した次第である。

 本書は、ガンダムの生みの親の一人である同氏が、創作の「原点」を語った書である。オホーツクの地で生まれた著者は、入学した弘前大学で学生運動に挫折した後、アニメ界に飛び込んだ。ガンダムの大ヒットで名を上げるが、やがて漫画界に転じ、歴史漫画で独自の境地を切り開いた。筆を使った流麗なタッチは、独学で身につけたものだという。今や著者は漫画界の巨匠であるが、「日のあたらないところにいたから、好きなことをやってこれた」と控えめに語る。この謙虚さと人間をみつめる確かな眼差(まなざ)しが、数々の名作を生み出してきたのだ。

 著者は、『虹色のトロツキー』など近代史モノを多数発表している。本書では、日本近代史への思いや東アジアの来し方行く末についても、存分に語られている。これを読むと、著者が「一番愛着のある作品」と呼ぶ『王道の狗(いぬ)』が書かれた背景がよく分かる。自由民権運動の活(い)き活(い)きとした描写には、明らかに全共闘時代の経験が反映している。

 「第二の故郷」弘前時代の回想も興味深い。本書は、斉藤光政(みつまさ)氏の聞き取りに基づく、青森の地方紙『東奥日報』への連載がもとになっている。してみれば、津軽からは太宰治ら反骨精神に富む創作者が多数輩出している。著者がその伝統に連なることを知り、青森出身の私は故郷を「再発見」する思いがしたのであった。

 ◇やすひこ・よしかず=1947年生まれ。アニメーターから漫画家に。漫画に『アリオン』『ナムジ 大國主』。

 岩波書店 1800円

読売新聞
2017年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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