『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』 ロバート・D・パットナム著

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われらの子ども

『われらの子ども』

著者
ロバート・D・パットナム [著]/柴内康文 [訳]
出版社
創元社
ISBN
9784422360010
発売日
2017/03/27
価格
3,996円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』 ロバート・D・パットナム著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

夢なき社会、赤裸々に

 わが国ではシングルマザーの家庭を中心として、子どもの実に6人に1人が貧困に喘(あえ)いでいる。このまま放置すると社会的損失は40兆円に達するとの試算もある(『子供の貧困が日本を滅ぼす』文春新書)。本書は、アメリカにおける子どもの貧困と格差の固定という社会的危機の現実を赤裸々に描き出した力作である。

 まず、著者のふるさとの街が登場する。オハイオ州ポートクリントン。50年代は居住地域や学校における階級分離は低く、街の人はみなを「われらの子ども」と考えていた。社会経済的なはしごを登る機会は豊富だった。それが5人の級友の人生として語られる。現代では、ジェンダーと人種における格差は軽くなっているが生まれついての階級格差がはるかに大きくなっている。資産格差が拡大して中間層が急落し上位と下位が急増して居住地域が分かれたのだ。著者は貧困率1%の地区と道を挟んだ貧困率51%の地区に住む2人の子どものエピソードを取り上げ、コントラストの激しさで読者の心を鷲掴(わしづか)みにする。その後で豊富な統計データを用いてエピソードを一つずつエビデンスで裏付けていくのだ。誰もが腹落ちせざるを得ない。

 同じ手法で家族の問題が取り上げられる。インタビューの対象はオレゴン州ベンドに住む白人の2家族。ここでも豊かさと貧しさが際立ち全てのデータは「はさみ状グラフ」(上層と下層が統計学的に有意に乖離(かいり))の体を成す。育児は黒人の2家族(ジョージア州アトランタ)、学校教育はヒスパニックの2家族(カリフォルニア州オレンジ郡)、地域コミュニティは母子家庭(ペンシルベニア州フィラデルフィア)。こうして全米各地で人種に関わりなく機会格差が拡大し社会が分断されていることが実証される。かつてのアメリカンドリームは夢なき社会へと変貌したのだ。「何をすべきか」と題された終章は重い。貧しい子どもの面倒を見る責任はわれら世界の大人全てが負っているのだ。柴内康文訳。

 ◇Robert D. Putnam=1941年米国生まれ。ハーバード大教授。著書に『孤独なボウリング』など。

 創元社 3700円

読売新聞
2017年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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