『フェミニストたちの政治史』 大嶽秀夫著

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フェミニストたちの政治史

『フェミニストたちの政治史』

著者
大嶽 秀夫 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784130331067
発売日
2017/02/28
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『フェミニストたちの政治史』 大嶽秀夫著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

痛み伴う試行錯誤

 小さい頃、『動物会議』という絵本が家にあった。戦争を繰り返す人間社会に見切りをつけた動物たちが、国際会議を主催するという、労働運動や第三世界の連帯を髣髴(ほうふつ)とさせる本である。平和を実現しようとして動物会議に世界中から参加者が集まるのだが、皆、奥さんたちにズボンにアイロンをかけてもらい、弁当や荷物を手渡されて、意気揚々と出かけていく。「なぜオスばかりなんだろうか」と小さい私は少し不思議に思ったものだった。男尊女卑的な右派だけでなく、左派運動にさえ潜む根源的な女性差別。それへの告発は、一番目に見えにくい家庭の中における従属や支配をあぶり出す。

 大嶽氏は日本の政策過程を主に研究してきた学者だ。あとがきで著者は、日本の男性政治学者としてジェンダーに関心を示したのは自分が最初ではないかと述べている。著者が女性研究者あるいは教え子の言葉を柔軟に聞き、そこから学ぶ態度なしには実現しえなかったことだろう。

 ジェンダーの歴史を学んだものからは、本書で解説されているように労働運動が女性の権利を軽視していたことは周知の事実だ。「妻子を働かせなくてよい賃金」という要求が、19世紀から熟練労働者の要求を反映する形で行われてきたことも、それが高度経済成長期の社会の要求にマッチして、専業主婦が大量に生み出されたことも常識だ。しかし、その指摘は主流の政治学において中心的な関心を占めることはなかった。

 本書は、各国の社会における女性運動の試行錯誤の歴史を、鋭い痛みとともに詳細に振り返っている。社会主義者の中での内ゲバとしての女性の権利主張と、反対者による暴力的なヤジ。自らの性を否定し、乱交に走る活動家。保守派女性による背後からの攻撃。全てがもどかしく、人間らしい愚かしさに満ちている。

 けれど、そのような痛みが隠されてきた日本社会を思う時、著者の労作が世に問われることに改めて意義深さを感じるのだ。

 ◇おおたけ・ひでお=1943年生まれ。京都大名誉教授。著書に『政策過程』『高度成長期の政治学』など。

 東京大学出版会 3200円

読売新聞
2017年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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