【話題の本】『勉強の哲学 来たるべきバカのために』千葉雅也著

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勉強の哲学 来たるべきバカのために

『勉強の哲学 来たるべきバカのために』

著者
千葉 雅也 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163905365
発売日
2017/04/11
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【話題の本】『勉強の哲学 来たるべきバカのために』千葉雅也著

[レビュアー] 海老沢類(産経新聞社)

 ■自由になる独学のすすめ

 巷にあふれる勉強のハウツー本とは一線を画す。ジル・ドゥルーズらのフランス現代思想に通じた哲学者が、学びの根源から説き起こす深い独学のすすめだ。

 のっけから、勉強とは〈自己破壊である〉と宣言される。会社の同僚、学校の友人、家族や恋人…と通常私たちは周囲のノリに合わせて何となく生きている。こうした集団的ノリをわざと失い、厄介で小ざかしい別のノリを備えた〈来たるべきバカ〉に変身することが深い勉強なのだと。そんな陰鬱で孤独な道のりが、言葉遊びの力やツッコミ(=アイロニー)・ボケ(=ユーモア)の関係といった原理的な話に、入門書の選び方やアプリの活用法といった実践知識をほどよく交える著者の語り口によって魅力的な風景に見えてくる。読後、勉強とは凝り固まった思考から自由になっていく歩みであることに気づく。

 今月7日に店頭に並び始めると完売する書店が相次ぎ、すでに3刷2万部。「勉強の本だが、社会の同調圧力からいかに外れるかも説く。20~30代の読者を中心に『勇気づけられた』との声も多い」と担当編集者。息苦しい情報過多時代を生き抜く術としても手に取られている。(文芸春秋・1400円+税)

 海老沢類

産経新聞
2017年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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