『グローバル・ジャーナリズム』 澤康臣著

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『グローバル・ジャーナリズム』 澤康臣著

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

 昨年、タックスヘイブン(租税回避地)の一つから大量の秘密文書が流出し、ロシア、中国、英国の政権中枢にまで関わる多くの不正行為が暴かれた。この「パナマ文書」事件は記憶に新しい。

 一一五〇万通にも及ぶ厖大(ぼうだい)な文書データについては、世界中のジャーナリストが協力しながら分析を進めた。その作業に日本のメディアから加わった記者が、国境をこえる調査報道の営みの現状について語った本である。

 グローバル化の時代では、犯罪や汚職も複数の国にわたるネットワークを通じて行われるから、その実態を調べる側も、所属する国をこえて連携する必要がある。投獄や殺害の危険にもさらされながら、それでも取材する営みを支えるのは、市民にとって重要な真実を伝えたいという情熱にほかならない。

 記者たちはみずから関係者のもとに出むいて取材し、自分の言葉で伝えることにこだわる。メディアの技術が高度に発展しても、事件に関する情報を適切に編集して伝えるのは、一人一人の生身の個人の営みである。その現場の空気が熱く伝わってくる。(岩波新書、860円)

読売新聞
2017年4月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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