アンガーマネジメントに学ぶ「NGな叱り方」とは?

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アンガーマネジメント 叱り方の教科書

『アンガーマネジメント 叱り方の教科書』

著者
安藤 俊介 [著]
出版社
総合科学出版
ISBN
9784881818589
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

アンガーマネジメントに学ぶ「NGな叱り方」とは?

[レビュアー] 印南敦史

『アンガーマネジメント 叱り方の教科書』(安藤俊介著、総合科学出版)の冒頭には、以下のように書かれています。

アンガーマネジメントというと、一般的には怒らない人になれる、イライラしない方法と思われがちですが、そうではありません。

叱ること自体は全然構わないのです。ですから、本書でも叱るなということは一切言いません。むしろ積極的に叱り、叱ることで部下がついてくる方法を紹介していきます。

叱ることは悪いことでもなければ、嫌われることでもありません。仮に叱ったとしても部下から好かれる人になれれば、叱ること自体は怖くなくなります。

この人からなら叱られても仕方がないなと思える人と、この人からは叱られたくないという人が、あなたにもいるのではないでしょうか。(「はじめに」より)

ちなみに著者は、2003年に渡米してアンガーマネジメントを学び、そのメソッドをいち早く日本に導入して第一人者となったという人物。きょうはCHAPTER 5「叱り方の教科書」から、「叱り方のNGな態度」に注目してみましょう。

叱り方のNGな態度

多くの人が普段なにげなく叱っている態度の多くには、「やってはいけない態度」があるのだそうです。また現実的に、気づくことなくNGワードを使っている人も多いといいます。そこで著者は、次のような悪い習慣や癖を一気になおしてしまおうと提案しています。

叱り方のNGな態度 1.機嫌で叱る

機嫌で叱るのは、もっともやってはいけないこと。たとえば「10時集合」としたとき、ある日は10時に来ても叱らないのに、ある日は5分前にきたら「遅い! 10分前集合が常識だろ!」と叱るとしたら、それは叱る基準が動いている=機嫌によって左右されているということになるわけです。

このように機嫌で叱ってしまうと、叱られる側も「どうせ機嫌が悪いから怒ってるんだろ。いまはスルーしておけばいいか」と叱っている内容を聞かなくなるもの。“叱る”とは「相手へのリクエストを伝えること」なので、聞いてもらえない態度になってしまったら、なにをどういっても伝わらなくなるというのです。

だからこそ、上手に“叱る”を伝えるためには、「叱る基準を動かさない、機嫌ではなく、ルールで叱ることを徹底する」のが重要。ルールを動かさずに叱れる人は基準が明確であり、公正な人と思われるもの。そのため叱ったとしても、「この人なら仕方がない」と相手は受け入れてくれるわけです。しかし、いつも機嫌に左右されて叱っているような人は、ただの機嫌屋、気分屋というレッテルを貼られ、人がついてこなくなるということ。

そこで叱るときは常に、「いま叱ろうとしているルールはなんだろうか」「ルールに沿って叱ることができているか」をチェックすることが大切だ。上記のように「時間を守るべき」ということで叱りたいのであれば、「10時までに来たら許す」と決めた以上、どんなに機嫌が悪くても許すべきだということ。一方、10時を1分でも過ぎたら、どんなに機嫌がよくても「いま遅れているよ」と注意をする。これが叱る側の努力であり、こうしたことを繰り返すことによって「ルールで叱る」ことができるようになるのだといいます。(109ページより)

叱り方のNGな態度 2.人格を否定する

叱ってよいのは「行動」「行為」「ふるまい」「結果」。逆に叱ってはいけないのが「人格」「性格」「能力」だと著者。遅刻をしたことについて叱るのはOKでも、「だらしがないから遅刻をするんだ!」と叱ることはNGになるということです。

人格や性格などを叱られると、不当に攻撃されたと受け取る人が多くなるのだそうです。そして不当に攻撃されたと思われてしまうと、当然のことながらリクエストは通りづらくなるもの。

ここで注目すべきは、著者の「リーダーは親ではありません」という言葉。つまり躾をすることが目的なのではなく、企業にとって正しい行動をしてもらうことが目的であるわけです。しかし現実的に、躾と指導を混同している人は多いのだとか。ところが指導が躾にまで及んでしまうと、やがて私生活の監視までするようになってしまうものです。それは完全に越権行為なので、パワハラになりかねません。

そこで叱ろうとする際には、「行動」「行為」「ふるまい」「結果」について叱ろうとしているのかを確認することが大切だそうです。そのときのポイントは、「事実だけを叱る」ということ。事実と思い込みを混同してしまうと、簡単に人格や性格などを攻撃することになってしまうというのです。

なお、ここでは代表的な「思い込み言葉」が紹介されています。

・みんな

・常識

・普通

・一般的に

・当たり前 等…

(113ページより)

「みんなそうしている」「こんなの常識だ」「これくらいのことができて当たり前だ」などなど、こうした言葉は、叱るとき実によく使いがち。しかしリーダーの戒めとして、事実と思い込みを混同しながら使っていることを認識しておくべきだと著者はいいます。そこで、叱るときは事実のみを指摘するというルールを守るべきだということ。(112ページより)

叱り方のNGな態度 3.人前で叱る

叱られることは、どんな場合であっても恥ずかしいもの。叱る側としては見せしめ的なことを考え、わざと人前で叱ったりするかもしれません。しかし、“叱る”が届きづらくなるのでそれは避けるべきだと著者は主張しています。

叱られる側は人前で叱られているとき、「恥をかかされた」という気持ちになるため、内容が耳に入らなくなってしまうというのです。そこで、叱るときは「一対一」「面と向かって」が基本だといいます。

ちなみに、メールや電話も望ましくはないのだとか。叱られる側は、叱っている側の表情、手振りなどをよく見ていて、そうしたなかから叱る側のリクエスト、伝えたいことを読み取ろうとするもの。しかし表情の見えない電話やメールでは、受け取れる情報が圧倒的に少なくなります。すると不要な誤解を招いたり、疑心暗鬼になってしまうことが多々あるというのです。

面と向かって一対一となると、叱る側も身構えたり、やりづらく感じるかもしれません。でも、叱ると決めた以上は堂々と“叱る”に向き合うことが大切。叱る側も気持ちのいいものではないでしょうが、叱られる側はもっと気持ちのいいものではないのだから、なおさらこの点を意識する必要があるということです。こちらが叱ることに向き合わなければ、相手はただ嫌な気持ちになったという感想しか持たなくなるわけです。(116ページより)

叱り方のNGな態度 4.感情をぶつける

“叱る”の主目的は「リクエストを伝えること」で、従目的が「自分の気持ちを伝えること」。ところが実際の叱る場面においては、自分の気持ちばかりを伝えようとしてしまいがち。目的が「自分の気持ちを理解しろ」になってしまうというのです。しかしそれでは、本来伝えたいこと、やってほしいことが伝わらないばかりか、相手は「責められた」という印象ばかりが強くなってしまうということ。

怒りの感情は「防衛感情」とも呼ばれるのだそうです。動物にも怒りの感情はありますが、それは本来、身を守るために備わっているもの。たとえば目の前に天敵が出てきたとき、動物は自分の命を守るために「戦うか逃げるか」の二者択一の行動をするわけです。動物に交渉などはなく、単純に戦うか逃げるかだけ。これを専門用語で「闘争逃走反応」というのだそうです。

このとき、身体がリラックスしていると、戦うことも逃げることもできません。そこで、怒りという感情を使うわけです。動物は目の前に天敵が現れたとき、怒りの感情を発動させることになります。怒りの感情はアドレナリンと密接に関係しているため、怒りが生まれるとアドレナリンが放出されるというのです

アドレナリンが出ると、呼吸は浅く速くなり、心臓はドキドキして血液を身体中に送るのだそうです。そして血液が体中に送り込まれることで身体は臨戦態勢に入り、点滴に襲いかかることも、その場から逃げることもできるようになるということ。著者によれば、これが本来の怒りという感情の役割。

もちろん現代社会では、命の危険を感じるような天敵が目の前に現れることはまずないでしょう。ただし私たちが怒っているとき、それは命ではなく、考え方や価値観、大切なもの、譲れないなにかを守ろうとしているというのです。いいかえれば「怒る」とは、なにか大切なものを守ろうとしている行為ともいえるのだそうです。

感情的に叱れば叱るほど、相手は責められたと感じるもの。つまり、目の前に天敵がいると感じるということです。すると闘争逃走反応によって臨戦態勢になり、自分の身を守ろうとするということになります。そして責められたと感じた相手の耳にこちらの言葉は入らなくなり、怒りの感情を発動させ、叱っている側に襲いかかるか、その場から逃げるかを自らに選択させようとする。そのため、感情的に叱ると相手から帰ってくる反応は「逆ギレ」か「言い訳」ばかりになってしまうということ。そのため、“叱る”が効果的に伝わらないわけです。(118ページより)

本書内で著者も指摘していますが、叱る上司の気持ちと、叱られる部下の気持ちは、往々にしてすれ違ってしまいがち。とはいえ避けて通ることもできないわけですから、上司は叱り方をきちんと学んでおく必要があるといえるでしょう。だからこそ、本書を参考にして円滑なコミュニケーションを実変したいものです。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年5月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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