『古都・震災地巡礼の詩』
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<東北の本棚>写真と短歌で歴史追憶
[レビュアー] 河北新報
仙台市在住の著者が訪ね歩いた京都の寺社と東日本大震災の被災地、それぞれで詠んだ短歌と写真を組み合わせて1冊にまとめた。
全体の7割を占める第1部「古都巡礼の詩」は、京都市内の各寺社の成り立ちや歴史上のエピソードを見開き2ページほどで紹介する。金閣寺、銀閣寺といった高名な寺はもちろん、数多くの会津藩士の墓がある金戒光明寺、仙台藩出身の新選組隊士山南敬助が眠る光縁寺など、東北ゆかりの寺もカバーしている。
著者が京都を訪れるきっかけは、震災後に一時的に仙台から事業所を移転した友人の激励だった。以来、古都の情緒にひかれて何度か足を運び、自転車で各地を回ったという。平安遷都から明治維新に至る複雑な日本史を理解する格好のハンドブックとなった。
第2部「震災地巡礼の詩」は、市職員として長年勤務した名取市と生まれ故郷である南相馬市小高区で撮影した写真と短歌で、哀惜と追悼の思いをつづる。
名取市では<身を挺(てい)し高台避難呼び掛けし人は夜空の輝く星に>、小高区では<騎馬武者に託する願い唯ひとつ命かがやくふるさと再び>などと詠んだ。
著者は1950年生まれ。73年名取市役所に入り、2010年退職。ほかの著書に「帰天」など。
金港堂出版部022(397)7682=1080円。