『どうすれば、売れるのか?』
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\"売れる\"コンテンツを構成する4つの要素とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
きょうご紹介したいのは、『どうすれば、売れるのか?―――世界一かんたんな「売れるコンセプト」の見つけ方』(木暮太一著、ダイヤモンド社)。文字どおり、これまで多くのビジネスパーソンが悩み、考え続けてきた普遍的なテーマについて独自の考え方を明らかにした書籍です。
かつてはマーケティングの理論としては、従来型のマス広告を前提にした「AIDMA理論」が大きな意味を持っていました。
A:Attention(注意)まず、その商品・サービスに注意を向ける(その商品を知る)
I:Interest(関心)興味を持つ
D:Desire(欲求)「ほしい!」という欲求が出てくる
M:Memory(記憶)記憶に焼き付ける(覚えておく)
A:Action(購買)店頭に足を運び、買う
(「はじめに」より)
しかしネット時代になると「AISAS理論」が注目されるようになります。
A:Attention(注意)まず、その商品・サービスに注意を向ける(その商品を知る)
I:Interest(関心)興味を持つ
S:Search(検索)ネットで検索して情報を集める
A:Action(購買)店頭に足を運び、買う
S:Share(シェア)SNSなどで、シェアする
(「はじめに」より)
つまり、「消費者がこのように行動するので、これに合わせて商品を訴求すれば売れる!」と考えられていたということ。しかし、ここには抜け落ちている要素があり、だからこそ一生懸命がんばっても「なぜか売れない」ということになるのだと著者はいいます。その要素とは「商品」、そしてその商品が持つ「コンテンツ」。
「コンテンツ」」とは、あくまで「中身」のことです。
全ての商品には「中身」があります。
当たり前ですが、映画のDVDを買う時、消費者はそのDVDのプラスチックがほしくて買っているわけではなく、「中身」である映画を買っています。同じように、冷蔵庫は、物質的には「鉄」ですが、「中身」は「冷やす」という機能で、消費者が冷蔵庫を買うのは、その機能がほしいからです。
どんな商品でも「中身」を持っていて、消費者がその商品を買うのは、その「中身」、つまり「その商品が持つコンテンツ」がほしいからです。
そのため、商品・サービスが売れるか売れないかは、その商品・サービスが持っているコンテンツが魅力的か、そしてその魅力が消費者にどう伝わるかで決まっているわけです。(「序章 売れるものには法則がある」より)
だとすれば、「売れるコンテンツ」とはどのようなもので、どんな特徴があるのでしょうか? この問いについて著者は、4つの特徴を挙げています。
売れるコンテンツの特徴1. ベネフィット
商品・サービスにお金を出してもらうための最大の条件は、それが「ベネフィット」を持つかどうか。ベネフィットがあるものでなければ、お客さんにお金を払ってもらえないということです。
なおベネフィットは日本語で「便益」「利便性」などと訳されますが、著者による“ベネフィット”の定義は「Aの状態だった人を、本人が望んでいるBの状態にすること」。いわばベネフィットとは、「A→Bの変化」だということになります。
どんなに便利に使えても、いくらデザインや性能がよくても、その人が望んでいる「B」の状態に連れて行けないのであれば、相手が覗く変化を提供できない、つまりベネフィットを持たないということ。逆に、その商品を買ったり、サービスを受けたりした結果、「いまの私が“なりたかった私”になれるかも!」「なりたかった気分になれるかも!」と思えば、そのコンテンツはベネフィットを持つわけです。
「変化こそがベネフィット」という理解をしているだけで、コンテンツの打ち出し方が大きく変わります。(88ページより)
たとえば、ここ数年流行しているライザップのテレビCMは、とてもわかりやすくベネフィットを表現していると著者は指摘しています。(87ページより)
売れるコンテンツの特徴2. 資格
しかし、いくらベネフィットがあっても、「やっぱり買わない」といわれてしまうこともあるもの。それは、ベネフィット以外にも「おもしろい」を構成する要素型にあるからで、それが2つ目の要素である「資格」なのだそうです。「資格」がある人が語ると、提供しているコンテンツをおもしろがってもらえるということ。ところが資格がない人だったら、なにをいっても認めてもらえないというのです。
当然ながらこの「資格」とは試験を受けて得られるような資格ではなく、「もっともらしさ」という意味。「私だったら、この話をしても自然だよね」「こういう経験をしてきた私が語るんだから、信ぴょう性あるよね」といえるようなものです。
「『何を言うか』より、『誰が言うか』が大事」と言われることがあります。同じことを語っても、語る人の信頼度によって響き方が変わるということですね。
ブログを書く時、オウンドメディアを作る時、自社製品を企画する時、どんなコンテンツを提供するかと合わせて、自分にそれを提供する資格があるかを考えなければいけません。(113ページより)
たとえば小太りな人が「ダイエットの方法」を語っても説得力はありません。「資格」がなければ、いくらいいベネフィットを提示しても、お客さんは振り向いてくれないということ。正確には、「その内容に興味はあるけど、あなたからは買わない」ということになってしまうというのです。
世の中ではいろんな人がいろんな情報を提供し、いろんな商品やサービスが売り出されています。だからお客さんは、「誰の話を聞くか」「どの商品を買うか」選ぶことが可能。だとすればその競争に勝たなければならないわけで、そのために必要なのが「資格」だということです。(112ページより)
売れるコンテンツの特徴3. 目新しさ
コンテンツには独自性がなければいけないと著者はいいます。「すごくいい内容なんです。最近よく見かける商品と、まったく同じですけど」では、そのコンテンツは売れないわけです。なぜなら、いままでとは違う“コンテンツ”が入っているからこそ、お客さんはその商品・サービスを買うのだから。
つまりコンテンツには独自性が必要で、それは一般的に差別化を指します。が、著者はこれを「目新しさ」と読んでいるのだそうです。「目新しい」「聞いたことがない」「これまでのものとはちょっと違うかも!」と相手に思わせることが大事だという考え方。
ただし、“目新しさ”だけを追求するのは危険だともいいます。なぜなら目新しさだけを考えていると、だんだん「みんなが知らないことであればいい」「なんでもいいから、みんなが知らない意外なことをいえばいい」と考えるようになってしまうから。すると必然的に、だんだんニッチな方向に目が行ってしまうというのです。
通常、世の中のコンテンツは、需要がたくさんあるところから出されます。いいマーケットからどんどん取られていくのは自然なことですね。皆さんよりも先に誰かがそのマーケットに足を踏み入れているわけです。すでに出されているものから“差別化”させようとすると、どんどんお客さんがいないところに行かざるを得ません。(125ページより)
差別化を考えると「求められない方向」に目が行ってしまうもの。しかし独自性はあっても、そこは「誰も見向きもしない場所」だということです。(122ページより)
売れるコンテンツの特徴4. 納得感
目新しいこと、世間で“通説”と思われているものと違うことを語る際に必要なものとして、著者は「納得感」を挙げています。「いわれてみたら、たしかにそうかもしれない」と思われるような内容が必要だということです。
なお、差別化しようとして、お客さんが誰もいないところに行かないために、そして「納得感」を打ち出すために、著者は「TTP(徹底的にパクる)」という考え方を紹介しています。「うまくいっているものをパクる」のは、ビジネスの定石だというのです。とはいえそれは、人のものを盗んだり、犯罪をするという意味ではなく、人のやり方を勉強・研究して取り入れるということ。
人のマネをせずに、独自で切り開いてやる! という気概は大事ですが、見方を変えるとそれは、ライバルの分析すらしていない単なる勉強不足の人なのです。
うまくいっているものを研究して、マネして、それを取り入れなければ、ビジネスでは勝てません。(138ページより)
誰しもが独自の世界をつくる必要はないと著者はいいます。みんなと同じ業界のなかで、先輩たちの知恵を学びながら、自分がいちばん素晴らしい商品・サービスを世の中に提供すればいい。これこそが、コンテンツをつくるために必要不可欠な考え方だということです。(138ページより)
本書で紹介しているコンテンツのつくり方は、あらゆる商品・サービスに共通しているそうです。つまりはこれらの要素を自身のビジネスに応用してみれば、そこから可能性が生まれるということ。ぜひ一度、手にとってみてはいかがでしょうか?