やがて訪れる「攻殻」の世界 文系がAIを学ぶ

レビュー

5
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文系人間のための「AI」論

『文系人間のための「AI」論』

著者
高橋 透 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784098253005
発売日
2017/03/30
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

AIはいかに人間を超えるのか

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 根っからの文系人間のせいか、「文系のための」といったタイトルに弱い。高橋透『文系人間のための「AI」論』のテーマはまさにAI(人工知能)だが、数学的解説も技術的説明も出てこないのが特色だ。

 そもそも著者の専門は西洋哲学である。ニーチェやデリダの研究者がなぜAIなのか。ロボットやAIなどのテクノロジーが人間の感情や思考を模倣しはじめた時代。「人間とは何か?」を考える貴重な手掛かりがそこにあると言うのだ。

 これまで「人間に近づいてきた」AIだが、いまや「人間を超える」ことの不安も出てきた。どこまでコントロールできるかという暴走のリスクだ。これからのAIは自動的に自分自身のプログラムを改良するようになる。「あるレベルでは人間の想定を裏切り、人間の引いた線引きの枠を内側から打ち壊して、AIは勝手に一人歩きをはじめる」可能性が高い。

 さらに著者は怖いことを言う。人間はやがてAIと融合、つまり「人間のサイボーグ化」が進むと。漫画『サイボーグ009』や『攻殻機動隊』の世界だ。それは「ポスト・ヒューマン」と呼ばれ、人間そのものの変容でもある。今後テクノロジー開発をどこまで許すのか。いや、止められるのかが大きな課題だ。

 現在、日本をはじめ世界各地で行われているAI開発の最前線については、将棋の羽生善治とNHKスペシャル取材班による報告『人工知能の核心』(NHK出版新書)が参考になる。

新潮社 週刊新潮
2017年5月18日菖蒲月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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