『熊本地震2016の記憶』 岩岡中正、高峰武編

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熊本地震2016の記憶

『熊本地震2016の記憶』

著者
岩岡 中正 [編集]/高峰 武 [編集]
出版社
弦書房
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784863291492
発売日
2017/03/17
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『熊本地震2016の記憶』 岩岡中正、高峰武編

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

多角的に災害に迫る

 熊本地震一年に刊行された記録集である。「想(おも)う」「詠む」「書く」「繋(つな)ぐ」「資料」の五章構成、熊本被災地に暮らす『逝きし世の面影』の渡辺京二さん、熊本日日新聞の記者、大学教授、俳人、古書店主などなど九人が文章を寄せて、体験記録、震災詠、被災日記、熊本を襲った過去の震災史と、多角的に今回の災害に迫っている。

 東北被災地の読者としては「やはりそうか」と深く頷(うなず)きながらページを繰る。二〇一一年の私たちの姿が声が、そのままここにある。嘆きも悲しみも、希望も絶望も、後悔と決意も、全てが六年前の私たちのそれとまっすぐに繋がっている。遠く離れた熊本の人たちの文章を読みながら、己が被災を想起せずにはいられない。ああ、そうだった、と。本書はその意味で、東北被災地の読者に初心を取り戻させてくれる一冊でもある。だけに、やりきれなくももどかしくもある。悲劇はなぜ繰り返されるのか。経験者の声は、次なる被災者になぜ届かないのか。

 防災・減災は可能としても、自然の営みそのものは止められない。春に桜が咲き、六月に雨が降り、夏の暑さに秋の紅葉、そして冬の雪と四季の移り変わりばかりが自然の営みではない。地震、噴火、台風、津波、洪水、大雪などなどこれまたすべてこの島国の自然の営みだ。そこに人が暮らしているからこその「災害」であって、温暖化云々(うんぬん)の議論はあるにしろ実相はただあり得べき自然現象でしかない。大地のくしゃみに、生活を破壊され、生命まで奪われて、生き残った人間はあたふたとおののく。そんな島国に私たちは暮らしていると、常に意識すべきなのだ。

 神戸は一月、東北は三月、熊本は四月。折に触れてその記録に目を通していただければ、私たちの発信を受け止めていただければ。いつかあなたの暮らす土地が災害に見舞われたとき、私たちの記録がきっと役に立つと、それを願って全国の被災地からの発信は続く。

 ◇いわおか・なかまさ=熊本大名誉教授。

 ◇たかみね・たけし=熊本日日新聞論説主幹。

 弦書房 1800円

読売新聞
2017年5月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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