ネスレ日本CEOが考える、いつの時代も生き抜くために必要な「3つの本質」とは?

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

世界基準の働き方

『世界基準の働き方』

著者
高岡浩三 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569835730
発売日
2017/04/19
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ネスレ日本CEOが考える、いつの時代も生き抜くために必要な「3つの本質」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

世界基準の働き方 海外勤務を拒み続けた私が超巨大グローバル企業の幹部になれた理由』(高岡浩三著、PHP研究所)の著者は、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。ネスレといえば、誰しもが認めるグローバル企業。ところが著者は同社に入社して以来34年間、ずっと日本を拠点に活動してきたのだそうです。

しかも2010年に代表取締役CEOに就任したものの、100年の歴史を持つネスレ日本において、生え抜きの日本人が社長になったのは史上初のこと。そのため当然のように、「海外経験がないのに、なぜ世界から高く評価される人材になれたのか?」という質問をされることも少なくなかったといいます。

著者によれば、その理由は明快。会社から期待される以上の成果を出してきたからだというのです。社長就任以前も、新人時代から約30年にわたって個人の目標を達成し続け、会社に与えられた目標の数字を割ったことは一度もないのだとか。

偉そうな表現になるのを承知で言えば、私は勝ち続けてきたのである。

だから海外経験がなくても、グローバルで勝てる人材として評価してもらえたのだ。

よって、私は断言できる。

「どんな国や組織で働いていても、世界に通用する人材になることは可能である」と。

それは単純なノウハウではない。

もっと本質的な原理原則のようなものだ。

私はネスレでの経験を通して、その本質を自分なりに掴んできたつもりだ。

ただし、それはマニュアル化できるものではないから、最終的には一人一人が自分の頭で考えて見つけ出すしかない。(「はじめに」より)

日本に生まれ、日本で生活しながら、世界のエリートたちと肩を並べて働いてきた著者は、「日本と世界の両方をよく知る人間だからこそ、語れることはあるはずだ」と断言します。本書も、そんな思いから生まれたわけです。きょうは第5章「これからの日本の未来を担う次世代へのメッセージ」に焦点を当ててみたいと思います。

日本に魅力や強みがあるからこそ、競争は激化する

日本の未来について、暗いイメージを持つ若者は少なくないはず。生まれたときから経済が停滞し、右肩上がりの時代を知らない世代なのですから、それは仕方がないこと。「このままでは、グローバルにおける日本の存在感も小さくなる一方だ」と、諦めかけている人も少なくないでしょう。だから無理にグローバルで勝負せず、日本人は日本人で小さくまとまっていればいいという内向きな思考が強くなるのは当然かもしれない。著者も、それは認めています。

しかし、経済の勝ち負けから少し距離を置いてみると、また違った現実が見えてくるともいうのです。たとえば著者が日ごろ、海外の人たちと接していて感じるのは、日本を尊敬する人が思った以上に多いこと。特に、日本の文化や国民性に敬意を払う外国人が増えているのだとか。このまま外国人観光客が増加すれば、日本の文化に直接触れる機会も多くなり、日本のファンになる外国人はいっそう増えていくだろうと予測しているのです。

そして今後もグローバルで社会や政治の不安定化が進めば、「日本で働きたい」「日本で学びたい」と考える外国人も増えるはず。すると大学への編入にしても、企業への就職や転職にしても、「日本に住む外国人」と日本人が同じフィールドで競い合うことになります。

そんな外国人のなかには、母国語と日本語、あるいは3カ国語以上を使いこなす人もいるはず。だとすれば、日本人が自分のしたい仕事を獲得し、成果を出すためには、そういった優秀なライバルたちと競争し、勝ち抜かなければならないことになります。たとえ日本で働いていたとしても、「国内における人材のグローバル競争」を避けて通れない時代がやってくるというのです。

だからこそ、いまの若い世代は、間違いなくこの変化に対応していかなくてはいけないということ。劇的なパラダイムシフトのなかで、勝ち抜いていくことが求められるという考え方です。(200ページより)

しかしその一方、価値観や環境がどれだけ変化しても通用する「本質」が必ずあるとも著者は主張します。具体的には、著者がどんな時代でも成果を出すために変わらず必要だと考えているものは、次の3つ。

・ 目標設定

・ 行動力

・ 「優秀さ」の定義

(204ページより)

ひとつひとつについて見ていきましょう。

目標設定

「目標は会社から与えられるもの」だと考えている人は、少なくないはず。もちろん、それを達成するために努力することは、会社員にとっての責務です。しかし著者は新人時代から、それとは別にもうひとつの目標を掲げてきたのだといいます。それは「自分を高めるために、自分で設定する目標」。それを自発的に設定するかどうかで、その後の成長速度に大きな差がつくというのです。

会社が社員に与える目標は、期待の平均値のようなもの。多くの場合は「入社1年目でこのエリアの担当なら、この程度の売上が妥当だろう」といった判断から設定されます。いわば、その目標を達成したとしても、平均値をクリアしたにすぎないということ。成果を出したといっても、他の入社1年目と横並びだというわけです。

会社から与えられた目標を達成しても、それは指示されたことをそつなくこなしただけだ。他人に言われたことしかできない人間から、イノベーションが生まれることは絶対にない。

ここでもう一度、思い出してほしい。

あなたがこの仕事を選んだのは、志があったからだ。

まだはっきりと自覚できていなくても、「自分は何をしたいのか」という志の種は持っているだろう。

それを実現するには、ゴールから逆算して、「1年後までにこれをしよう」「3年後までにこれをしよう」といった自分なりの目標設定が必要となる。(205ページより)

事実、著者が同世代の社員よりも早くポジションを上げることができたのも、そんな思いがあったからこそ。ちなみにきっかけは、著者が小学5年生のときに訪れた父親の死だったのだそうです。その葬儀の席で、祖父も42歳で亡くなったという話を知らされたというのです。そのため子どものころから「自分も、42歳で死ぬかもしれない」と考えるようになり、社会に出てからも42歳という締め切りから逆算し、「いまするべきこと」を明確にしたということ。(204ページより)

行動力

「行動する」ということは、成果を出すためのカギになると著者はいいます。しかし、それができない人が多いのも事実。ちなみに、著者がここでいう「行動」とは、「自分の頭で考えたことを実行する」という意味。「上司や先輩に教えられたとおりにすればいい」というようなルーティン化した行動から、新しい価値は生まれないわけです。そこで、成果を出せる行動とは、「深く考える」という習慣とセットであると考えるべきだといいます。

なお、行動できない人には「失敗を怖がる」という傾向もあると著者は指摘しています。「失敗したらどうしよう」というようなネガティブな感情がブレーキになってしまい、動き出せないわけです。

だが、誰も成功したことがないことをするのだから、失敗してもともとではないだろうか。

今までの成功がゼロなら、もし自分が挑戦して失敗したとしても、プラスマイナスゼロに変わりはない。

別にマイナスが発生するわけではないので、がっかりすることもない。

怖じ気づく必要はなにもないのである。(216ページより)

そもそも難しいと思われている仕事は、実際には「難しそうに見える仕事」に過ぎないことが多いもの。過去に誰もしたことがないから、本当の難易度がわからず、「難しいのではないか」と思い込んでいるだけだということ。挑戦してみたら意外と簡単で、大きな成果を出せるケースも少なくないといいます。(211ページより)

「優秀さ」の定義

どの会社の人事も「優秀な人材」がほしいといいますが、なにを持って「優秀」とするのか、その定義をきちんと考えている人は少ないものでもあります。入社後10〜20年を経た人材であれば、「イノベーションを生み出せること」「古い組織を改革できること」などということになるのでしょうが、社会人になったばかりの若者が、いきなりそれを果たすのは困難。

重要なのは、イノベーション人材になるまでの時間をいかに短くできるか。つまり若い人の場合は、成長が速いことが「優秀な人材」として評価されるために不可欠な条件だというのです。

ちなみに成長が速いほとの共通点として、著者はよく「スポンジを乾かすのが速い人」という例えを出しているそうです。成長著しい人は、スポンジのようになんでも吸収するもの。一度習得した仕事は、頭をそれほど使わなくともできるようになってしまうでしょう。

でも、そこで終わってしまうのなら、単なる「吸収が速い人」。本当に大事なのは、いったん水を吸収したスポンジを乾かし、また一から吸収できるようにすることだというのです。

一度できたことに満足して、二度目からずっと同じ方法を続けるなら、それ以上の成長は見込めない。

一方、成長を止めずに自分を伸ばし続ける人は、一度できたことに満足せず、次からはもっと上のレベルを目指そうとする。

もっと効率的に、もっと大きな成果を出せる方法はないか。

常にそれを考え続けるのだ。(220ページより)

だから大切なのは、新しいことをして成功したら、すぐにまた新しいことをしてみること。一度スポンジに吸収したら、それを日向に置いて乾かし、すぐに吸収できる状態にする。そんなイメージだといいます。(219ページより)

力強い主張は、すべて著者の経験に基づいたものです。事実、体験談も豊富に収録されているので、その考え方を無理なく吸収することができるはず。多少なりともグローバルな働き方を意識している方であれば、読んで見るべき価値があります。

メディアジーン lifehacker
2017年5月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加