明文堂書店石川松任店「生意気だけど憎めない少女と頼りなさが漂う青年の事件簿」【書店員レビュー】
レビュー
『探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて』
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明文堂書店石川松任店「生意気だけど憎めない少女と頼りなさが漂う青年の事件簿」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
昨年まで都心のスーパーに勤めていた橘良太は、缶詰2千個の誤発注が原因で店をクビになってしまう。地元に戻って『なんでも屋』を始めた彼は、全国的に有名な探偵である綾羅木孝三郎から娘のお守りを依頼される。それがロリータ・ファッションを身に纏う小学四年生、綾羅木有紗との出会いだった。本書は、全国的に有名な探偵を父に、世界的に有名な探偵を母に持つ探偵界のサラブレッドの少女探偵と何でも屋を営む31歳の独身男のコンビの活躍を描くミステリ集です。
ユーモアと共に綴られる、生意気だけど憎めない少女と頼りなさが漂う青年のコンビの関係性は擬似父娘(あるいは擬似兄妹)の雰囲気があって微笑ましい。有紗が切れ者なのに、泣き虫というのが印象的です(ここまで泣く探偵というのもめずらしいような気がします)。
著者の作品を読んだことのある人にとっては、言わずもがな、かもしれませんが、登場人物たちのやり取りは奔放(褒め言葉ですよ!)ですが、謎を解き明かす手際はとても丁寧で繊細です。ミステリがキャラクターに置いてけぼりにされる作品ではないことは、声を大にして言いたい。