明文堂書店石川松任店「過去の後悔をめぐる青春本格ミステリ」【書店員レビュー】

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幻視時代

『幻視時代』

著者
西澤 保彦 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784122060074
発売日
2014/09/23
価格
770円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

明文堂書店石川松任店「過去の後悔をめぐる青春本格ミステリ」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

『水の上を歩く』で文芸誌の小説新人賞を史上最年少で受賞した女子高生作家、風祭飛鳥。一九八八年、一躍時の人となった女子高生が遺体で発見される。その不審な死の謎は二〇一〇年になっても解明されていない。そんな彼女の死後に撮られた一枚の写真に、彼女の姿が写っていた。まるで心霊写真のように……。
 あの時、こうしていれば……。本書はそんな過去の後悔をめぐるミステリである。決して記憶を美化しない物語は、やがてひとつの《真相》(厳密に言えば、真相に一番近いと思われる解答)に向かって進んでいく。その《真相》はあまりにも苦いが、登場人物たちの深い悩みが強く伝わってくるものになっている。彼らの複雑な感情には共感を覚える人も多いはずだ(行為自体は許せないものであったとしても)。過去の行為に罪悪感を覚えたことのある人(ほとんどの人がそうだと思いますが……)は、きっと心を強く揺さぶられるだろう。
 忘れたくても忘れられない謎が青春の影を際立たせる一冊だ。青春小説としても本格ミステリとしても心に残る作品です。

トーハン e-hon
2017年5月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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