明文堂書店石川松任店「ミステリとギャグと野球への愛が溢れ出る一冊」【書店員レビュー】

レビュー

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明文堂書店石川松任店「ミステリとギャグと野球への愛が溢れ出る一冊」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

 私立鯉ケ窪学園高等部に通う《僕》こと霧ケ峰涼は、その名前から小学校時代のあだ名がエアコンだった。そんな《僕》は中学の頃、ある先輩から福音を与えられる。《「広島カープのエースと名探偵の名前は漢字三文字がよろしい」》と。それ以来、カープファンのミステリマニアとなった《僕》は、探偵活動を行うことを趣旨とする鯉ケ窪学園の非公認サークル「探偵部」(決して「探偵小説研究会」ではない)で副部長をしている。本書はそんな霧ケ峰涼が出会う事件の数々を、とてもユーモラスに描いた連作集になっています。
 小説の読み方は他人に強制されるものではありません。最後のページから最初のページへと遡って読もうが、本を逆さ向きにして読もうが、偶数ページだけ読もうが、個人の自由です(そんな奇特な人がいるかどうかは知りませんが……)。それでも勧める側としては、損はさせたくないな、という想いがあります。作品の仕掛けを考えると、是非とも第一話「霧ケ峰涼の屈辱」から読んで欲しいと思うのです(本書の中でも、その旨の注意書きが記されています)。のんびりとした雰囲気とは裏腹に、ミステリとしての意外性はあまりにも鋭いものとなっています。
 ミステリとギャグと野球への愛が作中から溢れ出る、とても愛おしい気持ちになる作品です。

トーハン e-hon
2017年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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