明文堂書店石川松任店「閉鎖的な村社会を舞台に、強烈な読後感を残す戦慄の一冊」【書店員レビュー】
レビュー
明文堂書店石川松任店「閉鎖的な村社会を舞台に、強烈な読後感を残す戦慄の一冊」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
昭和二十四年、建築会社の社長の娘である高校生の浜野洋子は、現在は堅気ではあるがヤクザ者の粗暴な空気を振りまく父親への反発から小林多喜二『蟹工船』や葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』といったプロレタリア文学へ傾倒していくようになる。プロレタリア文学を好む、共産主義の大学生や労働者が出入りする喫茶店に通うようになった洋子は、仲間内の中でリーダー的な存在である佐久間という工員に惹かれ、やがて恋人関係となる。しかし意外な形で二人の破局は訪れる。仲間内の二人が殺されるという事件が起こり、佐久間が姿を消す。青森の実家に来て欲しい、という佐久間からの伝言を受けた洋子は青森の農村へと赴く。そこで洋子を待ち受けていたのは、村人からの敵意と執拗な監視だった。
閉鎖的な村社会を舞台に、強烈な読後感を残す戦慄の一冊です。正直言って、後味は良くない。爽快さは欠片もない。しかしこの不快な読後感は魅力でもある。すべての真実が綺麗に明かされるわけではないところも独特な雰囲気を生み出していて、魅力的です。
最後の光景は(普通に考えれば)とても歪んでいるはずなのだが、どこか美しい。衝撃の問題作という言葉が似合う作品です。