安倍総理の政治哲学「国民は馬鹿である」は本気だと思ったほうがいい 古賀茂明・インタビュー

インタビュー

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日本中枢の狂謀

『日本中枢の狂謀』

著者
古賀茂明 [著]
出版社
講談社
ISBN
9784062196505
発売日
2017/05/30
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

安倍総理の政治哲学「国民は馬鹿である」は本気だと思ったほうがいい

古賀茂明
古賀茂明さん

官僚組織と産業界の癒着や、霞が関の利権構造を暴いて40万部に迫る大ベストセラーとなった『日本中枢の崩壊』(2011年5月刊/講談社)。著者で元経産官僚の古賀茂明さんの新刊が間もなく発売される。『日本中枢の狂謀』と題されたこの本で、古賀さんは日本の危機的な状況を明らかにし、そこから脱するための提案を行っている──。

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■安倍総理の政治哲学──「国民は馬鹿である」

──日本中枢の「崩壊」に続いて、本作は「狂謀」。このタイトルには、古賀さんのどのような思いが込められているのでしょう。

古賀 最初は『日本中枢の陰謀』というタイトルで進めていたんです。でも、「陰謀」というのが、いまひとつピンとこなかった。いまの日本中枢の人々は、はかりごとをそんなに隠れてやっているわけでもないですからね。それで「陰謀」に代わる言葉をずっと考えていて、その中に「狂謀」という案もあったのですが、原稿を書き進めるうちにそれが一番合っていると思うようになったんです。

強いタイトルにすると、左翼の人は興味を持つかもしれないけれど、そうではない人には「偏った本じゃないの?」と見られてしまう可能性もあります。でもそれくらい強い言葉を使ったほうがいいと考えました。最近、アメリカのトランプ政権を批判している人たちの間で流行っている言葉に「insane(インセイン)」というのがあって、「sane」は正気とか健全という意味だから、「insane」はその反対。そんなトランプ政権と同じように、「そこまでやるか?」ということを安倍政権は平気でやっているわけです。安保法制や武器輸出三原則の撤廃、特定秘密保護法などを見るにつけ、「日本は後戻りできなくなる段階を過ぎつつある」という危機感を私は募らせています。だから多少強いメッセージでもきちんと伝わるタイトルにして、読んでもらえた人の中から評価が出てくることで、だんだんと広がっていけばいいのかなと思っています。

──その強い危機感を抱き始めたのは、いつ頃でしょうか。

古賀 「安倍政権は今までと質が違う」ということは、だいぶ前から感じていました。かつては自民党政権の問題というと、既得権益層と癒着して利権を守り、国民が犠牲になっているという、主に経済構造の問題だったんです。対して、安倍総理は「改革です!」と叫んでいますが、実際はほとんど何もやっていない。そのうえ、「日本はもっと強くならなきゃいけない」ということを全面的に押し出してきたわけですね。

日本はずっと平和主義で、アメリカから「湾岸戦争に来い」と言われても恥を忍んで行かないという国でした。武器の輸出もしませんし、防衛費はGDPの1%以下。自分でタガをはめて、危ないところには極力近寄らない政策だったのが、安倍政権はことごとくそれらを覆そうとしている。私がその危機感を深めたのは、2015年に起きた後藤健二さんの事件でした(国際ジャーナリストの後藤健二さんがイスラム国の捕虜となる中、安倍総理は中東歴訪中のエジプトで、イスラム国を刺激するスピーチを行った)。

──古賀さんは当時、テレビ朝日の「報道ステーション」にゲストコメンテーターとして出演されていて、「I am not ABE」と書いたフリップを番組内で提示したのが大きな反響を呼びました。

古賀 「報道ステーション」はあの日が最後の出演になったわけですが、この本の第1章は番組を降板してすぐの頃にできていました。〈総理大臣の陰謀〉と題した章で、イスラム国人質事件をめぐって官邸が何を狙ってどのように動き、そこから安倍総理のどんな政治哲学が浮かび上がってくるのかを書いたんです。安倍さんの政治哲学とは、嚙み砕いて言えば、国民は「すごく怒っていても、時間が経てば忘れる」「ほかのテーマを与えれば気がそれる」「嘘でも断定口調で叫び続ければ信じてしまう」、つまり「国民は馬鹿である」ということです。

私たちはそんなに馬鹿なのだろうか、いやそんなことはないと思いながらこの本の原稿を書き進めたのですが、予想外の選挙(2014年12月の衆院解散総選挙)があったり、選挙後に情勢が変わったりして書き直すうちに、完成が今日まで延びてしまいました。

──〈「報道ステーション」の闇〉と題された第2章を含め、メディア支配の深層に迫り、安倍総理の「改革路線」や「積極的平和主義」「アベノミクス」などの嘘を徹底的に暴いていきます。

古賀 日本を成長できない国にしたことの罪も大きいですね。たとえば、日本の再生可能エネルギーの技術は、いまや取り返しがつかないくらい欧米に遅れを取ってしまっている。その中で安倍政権は「原発完全復活」を目論んでもいます。

そのように日本経済の問題点を分析したり、昨年の東京都知事選をもとに民進党の実情を明かしたりと、この本は間口がたいへん広い。それぞれの章は関連していますが、ひとつの章を取り出して読んでも面白いと思ってもらえるようにと考えて構成しました。目次を見て「ここが面白そうだ」と思ったら、そこから読んでもらっていいと思います。

講談社
2017年5月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

講談社

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