安倍総理の政治哲学「国民は馬鹿である」は本気だと思ったほうがいい 古賀茂明・インタビュー

インタビュー

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日本中枢の狂謀

『日本中枢の狂謀』

著者
古賀茂明 [著]
出版社
講談社
ISBN
9784062196505
発売日
2017/05/30
価格
1,870円(税込)

安倍総理の政治哲学「国民は馬鹿である」は本気だと思ったほうがいい

■改革はするが戦争はしない

古賀 実は、書きたいことをすべて書いたら500ページを超える分量になってしまったんです。担当編集者に「いくらなんでも長過ぎますよね」と自白して(笑)短くしたのですが、100ページ分くらい削ったところで、「これ以上短くしたら、本当に書きたいことが書けなくなる!」と思ったんです。そうしたら担当編集者も「面白いからこれでいいですよ」と言ってくれて。ちょっと長い本ですが、事件や騒動の裏話も交えて書いているので、興味を持って読んでもらえると思います。

──古賀さんは「改革はするが戦争はしない」を基本理念に掲げる市民のプラットフォーム「フォーラム4」を主宰するなど、精力的に活動を続けています。この本のエピローグでは「フォーラム4」に触れながら、いま本当に必要な改革とは何か、どうすれば市民に優しい国を実現できるかを説いています。

古賀 単に安倍政権を批判して終わりではないし、本を読んでもらえばわかりますが、民進党のことも相当書いています。よく言われるんです、「せっかく野党が固まってがんばろうとしているのに、古賀さんはいつも水を差す!」と。だけど、いまのままでは、民進党はじり貧ですよね。

まず、考え方をきちんと整理して、メッセージを出すことが大切だと思います。2015年春に「フォーラム4」は「改革はするが戦争はしない」という基本理念を発表しましたが、そういうメッセージを発している党はいまの日本にはありません。私たちが言う「改革」とは、「格差を縮小し、働く人々と真の弱者のための改革」です。この基本理念のもとに人々が集まれば、後戻りできなくなる段階を過ぎつつある日本であっても、その危機的状況から脱することができるのではないか。私はそう思っているんです。

■「性弱説」にのっとって考える

──『日本中枢の崩壊』を書かれたとき、古賀さんは現役官僚だったわけですが、当時とくらべると環境も大きく変わったのではないでしょうか。

古賀 だいぶ違いますね。当時は経産省の中のホットな雰囲気を感じながら書いていました。自分がそれまでに経験したこと、知ったことをそのまま書けば済んだところがあるかもしれません。経産省を辞めてからはそうはいきませんが、それでもいろいろな情報が集まってきます。たとえば経営再建中の東芝の案件も、「どう思いますか?」と各メディアから取材が来る中で、私は自分の見方を伝える。すると記者から「この人はこういうことを言っていたんですが、どういう意味ですかね?」というふうに質問されるんです。そのようにして集まる情報も多いですね。

また、経産官僚の頃から政治家のアドバイザーをやっていたことがあるので、役人の見方だけでなく、「政治家はおおむねこう考える」というのがわかるようになりました。政治というのは「心理」が大きく関係してきます。経済はもちろんそうですが、政治という分野でプレイする人たちも、組織だけではなく個人の利益を考えながら動いているんですね。経済全体の流れがこうなっているから、官僚の損得から考えるときっとこうなって、その結果、この政治家はこのように動くだろう……。そんな「政治心理学」とでも呼べそうな要素が、大きく影響すると考えています。

──「狂謀」が推し進められてしまう中で、正しいことを貫こうとする力が働かない要因のひとつとして、「人間は弱いからだ」と書いているのも印象的です。

古賀 性善説でも性悪説でもなく、私は「性弱説」にのっとって物事を考えています。たいていの人は悪い人ではなくて良い人だし、ほとんどの場合、良いことをしているんです。でも、いざ自分の損得が関わってくるとなったら、「やっちゃってもいいかな」となってしまう。つまり弱いのです。

ただそのとき、「外から見られているかどうか」というのがひとつのポイントになってきます。見られていたら、たいていの人は躊躇しますよね。卑近な例を挙げると、夜道に1万円札が落ちていたとき、あたりを見渡したら誰もいない。警察まで行くのにはちょっと遠い。そうしたら「もらっちゃおうか」となりやすい。でも、後ろからコツコツ足音がしてきて見られていると思ったら、「警察に届けなきゃ」となるでしょう。そういうことだと思うんです。見られているということが、すごく大事なんですね。

──そういった意味でも、「ちゃんと見ているぞ」と警告するこの本は、とても意義深いですね。

古賀 隠れてやっているつもりでも、見ている人がいるよということですね。嘘をついてだまそうとしても、気づく人がいる。マスメディアが本当のことをなかなか書けなくなっているいまだからこそ、そういう環境をきちんと作っておかないと危ないんです。

講談社
2017年5月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

講談社

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