『地中の記憶』 ローリー・ロイ著

レビュー

6
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地中の記憶

『地中の記憶』

著者
ローリー・ロイ [著]/佐々田 雅子 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784150019174
発売日
2017/03/09
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『地中の記憶』 ローリー・ロイ著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 昨年のアメリカ探偵作家クラブ賞・最優秀長編賞受賞作。全体の四割ほど進むまでは物語の進行がじれったいほどゆっくりだが、スローテンポだからこそ醸し出されるサスペンスがたまらない。

 アメリカ南部を舞台にしたミステリにはゴシック小説の雰囲気を色濃くまとった作品が多く、本書もその一つだ。十五歳と半年の少女がハーフバースデー(誕生日の六ヶ月前の日)の真夜中に井戸の底を覗(のぞ)くと、そこに未来の夫の顔が映るという謂(い)われも、ヒロインのアニーが霊感のような力をもっていること、叔母のジュナも同じ力の持ち主で、かつてそのために事件が起きてしまったという筋書きもゴシックホラー的。アニーが見つけた死体が呼び覚ます町の忌まわしい記憶とは?

 湿気を帯びた生ぬるく重い空気、生い茂る藪(やぶ)、深い井戸の底の水、大きな廃屋の傾いた網戸とその奥の暗闇。本書の描写が何かを連想させると思ったら、ゲーム『バイオハザード7』だ。ビジュアルのイメージがどんぴしゃり。家族の物語であること、その家族の娘がキーパーソンであることも重なるのが面白い。佐々田雅子訳。(早川書房、1800円)

読売新聞
2017年5月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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