『ウルトラ怪獣幻画館』
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【児童書】『ウルトラ怪獣幻画館』実相寺昭雄著
[レビュアー] 藤井克郎
■若い世代に「実相寺ワールド」
厳密に言えば、児童書とは違うのかもしれない。だがテレビのウルトラシリーズの演出家としては異彩を放ち、後に映画監督やオペラの演出でも才能を発揮した著者が、淡い水彩画の上に美しい書体で文字を書き込んだこの画集は、紛れもなく少年少女の心に訴えるものになっている。
登場するのは、メトロン星人、ジャミラ、シーボーズといった自身が手がけた作品の怪獣だけでなく、バルタン星人、ペスター、ゼットンに、果てはビートル機、科特隊本部と幅広い。円谷プロがあった東京都世田谷区をウルトラマンが低空飛行する作品もある。これらは11年前に他界した著者がはがきなどにしたためていたもので、いわば趣味の領域だが、「あの頃、星が近かった」といった名言を含め、改めて故人の才人ぶりに気づかされる。
「実相寺昭雄ファンではない若い世代にも手に取ってもらいたいという意図があった。日常の中にある非日常の風景が新鮮に映るのでは」と、ちくま文庫編集部の青木真次さんは話している。(ちくま文庫・900円+税)
藤井克郎