『猟師の肉は腐らない』
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われわれは本当に豊かになったのか
[レビュアー] 図書新聞
いやあ名著だった。タイトルから、最近ハヤり(?)のジビエに関する小泉氏のエッセイ集かと思ったら、さにあらず、奇想天外かつリアリティのある、抱腹絶倒かつ涙腺崩壊必至の物語であった。主要登場人物は、著者小泉氏の分身らしき男と、山に生きる「義っしゃん」と強い忠犬の「クマ」。この二人と一匹が、ほぼ全編にわたって食料を集め、飲み食いする。もしかしたら読者は、「この人たち、ずっと飲み食いのこと考えてる。嫌らしい」と思うかもしれないが、真実は逆なんだ。「なぜわれわれは、一日中ずっと、食料のことを考えないで済んでいるのか」、これこそ考えるべきことなんだ。われわれは本当に豊かになったのか。軽く読める本書のこの問いは重い。俺も義っしゃんに出会うために、酒場を巡ろう!(4・1刊、三八四頁・本体六三〇円・新潮文庫)