『天下人の父・織田信秀』 谷口克広著

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天下人の父・織田信秀

『天下人の父・織田信秀』

著者
谷口克広 [著]
出版社
祥伝社
ISBN
9784396115012
発売日
2017/04/01
価格
885円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『天下人の父・織田信秀』 谷口克広著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 信長は領国の拡大に応じて、清須→小牧→岐阜→安土と居城を移動させた。これは他の戦国大名にはあまり見られない彼独自のスタイルだが、どうもこれは父・信秀から学んだものだったらしい。

 意外に「ふつうの人」だったという指摘が近年相次いでいる信長だが、信長研究の第一人者は彼の独自性を父親からの継承という視点で分析する。他にも、旧権力を推戴(すいたい)しての勢力拡大、家臣の城下集住、籠城戦は選択しない、農政よりも商工業振興など、この父子の共通点はたしかに多い。とくに籠城戦の忌避には、城を軍事施設ではなく経済拠点とみる発想があるようだ。「天下人」の父は、やはり非凡だったということか。

 しかし、あまり知られていないことだが、信長の戦歴には意外と負け戦が多い。むしろ敗戦にもめげず、すぐに立ち直るのが、彼の長所だった。じつは、これも父親そっくり。一度や二度の負けにもめげない精神力、それが信長が親父(おやじ)の背中から学んだ最大のものだった、と著者は言う。

 息子を「天下人」に、という野望を抱くお父さん、諦めるのはまだ早いですぞ!(祥伝社新書、820円)

読売新聞
2017年5月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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