『オリュンポスの神々の歴史』 バルバラ・グラツィオージ著

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オリュンポスの神々の歴史

『オリュンポスの神々の歴史』

著者
バルバラ・グラツィオージ [著]/西村 賀子 [監修、訳]/西塔 由貴子 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784560095171
発売日
2017/02/26
価格
3,996円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『オリュンポスの神々の歴史』 バルバラ・グラツィオージ著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 古代ギリシアのオリュンポス山では、最高神ゼウスや予言の神アポロン、愛の神アプロディテなど12神が一緒に暮らしていた。古代の神々が忘れ去られる中で12神はしぶとく生き残った。それは何故(なぜ)か。本書は2千年を超える神々の旅程をたどった佳作である。

 古代ギリシアで生まれた12神はアレクサンドロス大王の東征によってエジプトやバビロニアの占星術と結びついた。南イタリアからの移民エンニウスやウェルギリウス(ローマ建国叙事詩「アエネイス」の著者)の尽力で、ローマ帝国は名前を少し変えただけで(ユピテル、ウェヌスなど)12神をそのまま移し換えた。キリスト教やイスラム教が一神教革命を成就した中世、12神は占星術の中などに上手に変装して生き延びた。そしてルネサンスで、人間性への新たな信念を伝える使節として再生したのである。アエネイスの続編であるペトラルカの叙事詩「アフリカ」がその先鞭(せんべん)をつけ、ボッティチェッリの絵画「ヴィーナスの誕生」で頂点に達して現在に至っている。性と自然に価値を置く古代の神々は不死だったのだ。西村賀子監訳、西塔由貴子訳。(白水社、3700円)

読売新聞
2017年5月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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