パチンコで稼ぎを散財する圭太のもとに、会ったこともない「祖父」からはがきが届く。「引き継いでもらいたいものがある」と、かつて炭鉱で栄えた村に呼ばれた圭太。そこには、失われたものをよみがえらせるという花、ウィジャヤクスマと、それを育てる奇妙な老人、政二が待っていた。
2人で過ごし、政二から太平洋戦争の記憶を聞かされた圭太は、次第にそれが自分の記憶のような気になる。そしてウィジャヤクスマが咲くときが近づいてくる-。
美しい光景の裏に横たわる過去の営み、先人たちの苦悩をすくいとり、紡いだ太宰治賞受賞作。(筑摩書房・1200円+税)
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2017年5月28日 掲載
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