HACHIは『進撃の巨人』を一気読みしてエキサイティングな物語の仕組みに気づく

レビュー

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進撃の巨人(22)

『進撃の巨人(22)』

著者
諫山 創 [著]
出版社
講談社
ジャンル
芸術・生活/コミックス・劇画
ISBN
9784063959093
発売日
2017/04/07
価格
463円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

HACHIは 『進撃の巨人』を一気読みして エキサイティングな物語の仕組みに気づく

[レビュアー] HACHI(ファッションデザイナー)

HACHI
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 『進撃の巨人』という作品をご存じの方はもちろん多いと思う。当然この作品は様々な人に人気なだけあって「作品作り」の模範としてもとても興味深く読める。
 僕は最近になりiPhoneアプリで一気に移動時間などの合間に読み進めてしまった。巷では作図が少しおかしいとか言われているようだが、そんなことは素人目の僕には全く気にならないくらい面白く、どんどん読み進めてしまう。
 ここから先は、ネタバレ的なのが嫌な人は読まないようにしてください。(笑)
 作品の面白い肝の部分はこうであろう、「人間が暮らす都市領域の外に存在する巨人の脅威、どこまで広がっているか分からない、とりわけ僕たち人類にとっての宇宙のような……未知領域からいつ訪れるか分からない圧倒的脅威とそこへの好奇心」。もう一つは「敵は外部だけにあらず、人類の暮らす世界とは隔たれた王家や権力者が幅を利かせる特権的かつ閉鎖的な政治領域に潜む闇への脅威」であるわけだ。
『進撃の巨人』の連載が開始されたのは2009年。無名の新人漫画家のデビュー作として始まったにもかかわらず、またまく間に人気を得、かれこれ8年近く物語が続いている。ロングラン作品を生み出す方法にはいくつかの共通点が必ずある。主人公が歳を重ねる、味方が寝返る、最終ボスが実は味方だった、などなどテンプレとしてはいくらでもある。ただし、ロングランさせすぎた作品の末路は、正直半分くらいが納得のいく素晴らしい終わり方とはならないことが多い……(ような気がしている)。
『進撃の巨人』は、そもそもが特殊な世界の在り方をしているという前提がこの面白さを引き出していたと個人的には思っているので、だんだん世界の謎が明かされていく中で超絶に面白い最後にはならなさそうな、そんな悪い予感がしている次第……。
 背景設定の面白さが作品の面白さとなっている場合はその背景設定の種明かしをしていくことが作品を楽しむ快楽となっていくエネルギーになるので、最後は少なくなってしまった手札から新しい謎をまた引っ張り出してくるのだろうか?
 エキサイティングな物語というのは危険なバランスを「構造」の中に孕ませていればその描かれる全てのディテールにアンバランスな背景が付いて回るので、緊張感が全体的にまとわりつく。
 このように見える構造はファッションでも同じである。どこかに普通ではない常識的ではない要素が混ざっている場合、そのファッションは途端にアグレッシブに映るだろう。エキサイティングな作品は人の心に強く刺さる。スリリングさを内包させるバランスを構造から考えるというような作品方法論は、数ある漫画などからたくさん学ぶことができる。
 面白い漫画作品や物語作品は大体にして、このようなバランス構造論的に特徴的であることが多いのだ。それはディテール以前に組まれている陣形自体が強い、というような。

太田出版 ケトル
vol.35 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

太田出版

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