『独裁者たちの最期の日々(上・下)』 ディアンヌ・デュクレ、エマニュエル・エシュト編

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独裁者たちの最期の日々 上

『独裁者たちの最期の日々 上』

著者
ディアンヌ・デュクレ [著]/エマニュエル・エシュト [著]/清水珠代 [著]
出版社
原書房
ISBN
9784562053773
発売日
2017/03/03
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

独裁者たちの最期の日々 下

『独裁者たちの最期の日々 下』

著者
ディアンヌ・デュクレ [著]/エマニュエル・エシュト [著]/清水珠代 [著]
出版社
原書房
ISBN
9784562053780
発売日
2017/03/03
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『独裁者たちの最期の日々(上・下)』 ディアンヌ・デュクレ、エマニュエル・エシュト編

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

現代世界史紡ぐ三世代

 「二〇世紀の全体主義政体の創始者あるいは継承者として、本書に描かれた独裁者は三世代にわたっている」

 「まえがき」にあるとおり、上巻のトップバッターには一九四五年四月に殺害されたムッソリーニ、下巻のラストには二〇一一年一二月に死亡した金正日が配されている。上下巻に各十二名ずつ、ヒットラーやスターリン、フセインやポル・ポトのような超有名クラスから、フランコやチャウシェスクのように忘れられつつある中級クラス、フワーリ・ブーメディエンやモブツのような「それ誰?」クラスまで幅広く選び出し、コンパクトにまとめた人物伝で、通読すれば、個々の人物について知識を得るだけでなく、第二次世界大戦後の現代世界史をざっとつかむことができる。

 目次を見ると、「独裁者」というくくりで、ユーゴスラヴィア建国の父ティトーやソ連のブレジネフが入っていることに、ちょっと違和感を覚える。一九六〇年生まれの私の記憶では、ティトーは国父として当時のユーゴ国民に敬愛されていたはずだし、ブレジネフ書記長はソビエト共産党の最高指導者ではあっても、粛清の限りを尽くしたスターリンや、キューバ危機を起こしたフルシチョフに比べたらずっと温和な(現状維持主義の)政治家だったはずだ。

 しかし本書を読み進むと、総勢二十二名に及ぶ執筆者たちの定義する「独裁者」が、一般的な暴君のイメージに留(とど)まるものではなく、その国民にどんな国家観を与え、どんな歴史を紡ぎ、後世にどのような影響を及ぼしたかという観点まで含んでいると判(わか)ってくる。その猟奇的な奇人ぶりを描いた『食人大統領アミン』という強烈な映画を思い出し、個人的に興味深かったのはウガンダの元大統領アミン・ダダだ。この人、ちゃんと「畳の上で」死んでいるのですよ。天網恢々(てんもうかいかい)も、残念ながら全てを漏らさぬわけではないらしい。清水珠代訳。

 ◇Diane Ducret=文化ドキュメンタリーの制作や歴史番組の司会を務める。

 ◇Emmanuel Hecht=レクスプレス書籍部編集長。

 原書房 各2000円

読売新聞
2017年5月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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