終わりのない適職探しや天職探しはやめよう。いまの時代に必要なのは「とにかく行動すること」

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なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?

『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』

著者
豊田義博 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569832029
発売日
2017/04/20
価格
939円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

終わりのない適職探しや天職探しはやめよう。いまの時代に必要なのは「とにかく行動すること」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか? 職場での成長を放棄する若者たち』(豊田義博著、PHPビジネス新書)の著者は、リクルートで「就職ジャーナル」「リクルートブック」に携わり、「Works」編集長を経て現在はリクルートワークス研究所主幹研究員を務める人物。20代の就業実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就活、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わっているそうです。

そんな著者は、近年はバリバリと働き、前向きに挑戦していく思考が減退し、ほどほどの無難な生き方を志向する若手が増えてきたと実感しているといいます。「指示待ち」と指摘されることからもわかるとおり、いま働いている職場で、仕事に前向きに取り組んでいるとはいえないとも。しかし、とはいえ能力が低いわけではないというのです。

会社は「今どきの新人・若手は、どうにも使えない」と見ています。しかし、新人・若手は「こんなところでは、生き生きと働くことができない」と、息苦しさを覚えているのです。(中略)彼らは今の仕事で「力を持て余している」のです。それは、若手社員の問題なのでしょうか。それとも、彼らの職場や上司が抱える問題なのでしょうか。(「はじめに」より)

著者はこの疑問に対し、変わるべきはどちらか一方ではないと断言しています。どちらか一方ではなく、双方が変わる必要があるということ。とはいえ先に変わらなくてはいけないのは会社の側で、特に新人・若手を預かるマネジャーが、考え方や行動を変えることが急務だといいます。

しかし若手社員にとっても、「どう変わる必要があるのか」「それはなぜなのか」は気になるところ。そこで若手自身による課題解決の方向性、施策が提示された第五章「若手社員への処方箋——『天職探し』を捨てよ、外に出よう」を見てみましょう。

「適職探し」「天職探し」を捨てよう

先に触れたとおり、いまの仕事や会社に満足しておらず、職場の人たちともいいつきあいができていないという若手社員は少なくないはず。日々の仕事を淡々と、おもしろみを感じることもなく“待ちの姿勢”でこなしているのかもしれません。

そして、「もっと自分が生き生きとできる仕事や職場が、あるいは自分が『いい会社だ』と思える会社が、どこかにあるに違いない」と思いを巡らせているのでしょう。そんな巡り会いがあれば、きっと「何者か」になれるかもしれない、と。しかし、まず、そういった考え方を捨てるべきだと著者はいうのです。

人には、それぞれに個性があるもの。興味・関心、志向・価値観、能力・欲求、思考行動特性、動機などさまざまな要件において、一人ひとり、見事なまでに違っているわけです。

一方、仕事にも個性があります。営業、販売・サービス、商品開発、事業企画、人事、総務、経理、広報などなど、職種は多数。そして、たとえば同じ営業という仕事をとっても、車を売る仕事と、保険などの金融商品を売る仕事とではまったく異なります。また同じ車でも、軽自動車を売る仕事と高級車を売る仕事とではまったく違ってくるでしょう。それどころか、同じ高級車でも、車種や会社のカラーによって、営業のスタイルはかなり違ってくるはず。仕事も千差万別です。

そして適職探し、転職探しをしている方は多くの場合、「一人ひとりの個性に合った、自分らしい仕事がきっとある。その仕事を探し出し、その仕事に就ければ、きっと生き生きと働くことができる」と考えているものだといいます。

そういう人は、そうした考え方を、誰かしらから聞いたり、なにかで読んだりして、そのように考えるようになっているのだそうです。そして、そのベースにはキャリア理論があるのだとか。(216ページより)

計画的なキャリア形成が難しい時代

キャリアカウンセリングのベースとなるキャリア理論にはいくつかの流派があり、そのなかでの古典というべきが「特性因子理論」。「人が転職を繰り返してしまうのは、人の持っている志向、能力などの特性と、仕事の特性とがマッチしていないからであり、よりフィットした職業選択をすべきである」という考え方だそうです。

そしてこの考え方が、日本のキャリア教育や、就職活動の際の進路指導、キャリアカウンセリングのベースになっているというのです。ただし、パーソンズという心理学者がこれを体系化したのは、1900年代のこと。現在のような変化の激しい世の中ではなく、20世紀初頭の社会において理論化されたわけです。

そしてその後、キャリア理論はさまざまな形で進化することとなり、欧米社会が成熟した1980年代以降になると、また新たな理論が生まれることに。社会環境変化が激しい時代においては、旧来のように自身が目指す職業を決めて、それに向かって努力するような計画的なキャリア形成は困難になっているといいます。決めすぎることによって、かえってチャンスを失ってしまうこともあるのだとか。

そこで「なんになるか」に着目するのではなく、「どのように選択、決定することが望ましいのか」という意思決定プロセスに着目したり、「どのような行動をしていると、キャリア満足度が高くなるのか」という個人の学習側面に着目するようになってきたのだといいます。(219ページより)

偶発的な機会を創り出す

その理論のひとつに、「ブランド・ハップンスタンス・セオリー(計画された偶発性理論)」というものがあるそうです。提唱者のひとりである心理学者、クランボルツの主張は簡潔に次のようにまとめることが可能。

・ ゴールを決め、計画的に実現している人は一握りに過ぎない。

・ 将来就きたい職業をイメージするのはいいが、それにこだわると、視野が狭くなって、多くの可能性を捨ててしまうことになる。視野を広げ、偶発的な機会を活かして、キャリアを拓いていくことが重要だ。

・ そのような偶発的な機械は、多くの人の周辺に数多くある。そして、その機会を活かした人は、予期せぬ出来事をキャリアの好機に繋げる行動をとっていた。

・ 目の前にある仕事を、仮にそれが望まない仕事であったとしても自身の新たな可能性を試すチャンスだと捉えて積極的に引き受け、課題解決に向けて、新たな行動をとっていた。

(221ページより)

クランボルツの理論は、日本でキャリア研究を推進する人々や、キャリア研究に興味・関心を持つ人から喝采を持って迎えられたそうです。理由は、それまでの特性論的なキャリア理論が、どうも日本にはなじまないと思っていた人が多かったから。(220ページより)

「誰もが100年生きうる時代」のキャリアとは

しかし、この考え方がもはや時代遅れであることは、誰の目にも明らかだと言います。欧米のキャリアカウンセリング現場でも特性論的アプローチを部分的に活用することはあっても、それを中心にしたカウンセリングは行なっていないというのです。

「米国では2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう」(222ページより)

ご存知の方も多いかとは思いますが、これはニューヨーク市立大学教授、キャシー・デビッドソンの言葉。技術の進化によって、仕事の中身は変わります。なくなる仕事も多いでしょうし、日本からなくなる仕事もあるはず。そして同じように、新たに生まれる仕事もたくさんあるわけです。

だとしたらそんな時代に、いまある仕事のなかから自分に最適な仕事を見つけ出そうとする天職志向や、ある仕事や職種にこだわり、その仕事独自の専門知識を蓄えていくスペシャリスト思考には意味がないという考え方。当面はそれでよかったとしても、10年後、20年後には意味をなさないというわけです。

適職志向、天職志向を持っている人は、仕事において責任を避けようとしたり、リスク回避的になったり、指示されたことしかしない傾向が強い、という研究結果もあります。適職志向、天職思考は、意味がないばかりか、逆効果なのです。あなたのキャリアを後ろ向きなものにしてしまいかねないのです。(223ページより)

ロンドン・ビジネススクール教授リンダ・グラットンらの著作『ライフ・シフト』にあるように、これからは「誰もが100年生きうる時代」。そんななか、同じ仕事を60年や70年も続けるというキャリアを歩む人は、きっといなくなるだろうと著者。それが、「適職探し、天職探しをやめよう」という発想の根拠であるわけです。(222ページより)

いまの時代に必要なのは、「とにかく行動すること」

とはいえ現実的に、習慣化した思考をやめるのは簡単ではありません。そこで著者は、「適職探しのことばかり考えること」をやめてみようと提案しています。具体的には、「適職探しのことばかり考えて、いろんなことをやらない」ことだとか。

いまの仕事や職種にあまり満足していない、職場にもあまりなじめない。自分が生き生きとできる仕事や職場が、自分がいい会社だと思える会社が、どこかにあるに違いないと思いながらも、日々の仕事を待ちの姿勢でこなしている、という状況を変えてみようということ。

自分自身に求められているのは、なにかに前向きに立ち向かい、試行錯誤を重ねながら、自分ならではの「仕事の型」をつくり上げること。そのためには、なにかを一生懸命することが大切だという考え方です。

前出のクランボルツは、いまの時代に必要なのは「とにかく行動すること」だと主張しているそうです。つまり必要なのは、そのような行動だということ。(224ページより)

考えようによっては、これは若手社員に限らず、すべての世代にあてはまることかもしれません。そういう意味でも、若手社員からマネジャーまで、幅広い層に訴えかける力が本書にはあるといえそうです。

メディアジーン lifehacker
2017年6月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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