【話題の本】『警察手帳』古野まほろ著
[レビュアー] 磨井慎吾
■「警察というカイシャ」、内側目線で描く
約30万人の職員を有する巨大組織である警察。地方の中核市と同じくらいの数の人間がいるだけに、その内部では独特の社会と文化が確立している。
一般市民にとっては強面(こわもて)でミステリアス、敬して遠ざけたい存在である一方で、興味の対象でもある警察。その内実を軽妙な筆で解説したのが本書だ。採用から昇進、刑事の勤務、キャリアとノンキャリアの実際の関係など、「警察というカイシャ」を内側目線で描き出す。シャバと一線を画す階級社会ではあるのだが、そこはやはり血の通った生身の人間の関係で成立しているのがよくわかる。
新潮社によると、3月に初版1万2000部でスタートし、現在6刷3万1000部と非常に好調だ。
ほんわかしたペンネームを持つ覆面ミステリ作家の著者だが、実は主に警備畑を歩んだ元警察キャリア。現役時代は特殊な法律の専門家として本名で何冊も法学書を出し、時には国会議員からも質問を受けていたという。本書は国会議事堂地下にある議員御用達の書店「五車堂書房」でベストセラーとなっているが、手にした先生の中には、ひょっとしたら警察官僚としての著者に直接お世話になった人もいるかも…。(新潮新書・800円+税)
磨井慎吾