物事を継続する秘訣は、「自分で決める」癖をつけること

レビュー

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やめられない!ぐらいスゴイ 続ける技術

『やめられない!ぐらいスゴイ 続ける技術』

著者
菅原洋平 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784046019127
発売日
2017/04/13
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

物事を継続する秘訣は、「自分で決める」癖をつけること

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「継続は力なり」という言葉があるように、「継続すること=いいこと」という共通認識があることは事実。しかし、この考え方はともすると「継続できない=ダメな人」という考えにまで発展し、続けられない自分を否定するもとになりがちです。

でも続けられないのは根気や性格のせいではなく、脳に備わっている「継続する仕組み」を、正しく使いこなせていないから。そう主張するのは、『やめられない! ぐらいスゴイ 続ける技術』(菅原洋平著、KADOKAWA)の著者。リハビリテーションの専門職である作業療法士として、心療内科で外来を担当する人物です。

脳のリハビリテーションにおいて、継続する力(「続ける」こと)は大きなテーマで、ポイントは「継続できる人」と「継続できない人」に能力の個人差があるのではないということ。自分がしていることが、脳の仕組みに合っているかどうかがもっとも重要だというのです。

そして人間が行動や思考を継続して望ましい結果を得るためには、脳の仕組みに従って脳を使いこなすことが必要。そこで、医療の現場で活用されている「自分のやりたいことを継続する力」を養う方法を紹介したのが本書だというわけです。

なお本書では、脳が持っている次の5つの仕組みを使って継続を実現するそうです。

1. 望まない行動をやめる

2. 自分で行動を決める

3. 体の動きを自動化する

4. 続けているときの体の反応に注意する

5. 続ける行動を検索できる言葉をつくる

(「はじめに」より)

つまり、継続の秘訣は「自分で決める」ということ。きょうはその「自分で決める」ことに焦点を当てた第2章「脳はやらされ仕事が続けられない」から、「自分で決める方法」をご紹介したいと思います。それは、脳内に「自分で選んだこと」をつくっていくというだけの簡単な方法なのだそうです。

自分で決める方法1. 朝イチにいきなり決める

著者によれば、自分で行動を選ぶ簡単な方法は、脳がもっとも行動を選びやすい時間帯に選ぶこと。私たちの細胞には「時計遺伝子」が存在し、それが時計物質を放出したり分解することで各内臓などの働く時間を決めているのだといいます。「生体リズム」と呼ばれるこの時間によって、神経伝達物質やホルモンが分泌される時間がおおよそ決まっていくというのです。つまり、もともとその物質の分泌が高まる時間帯に、その物質が担う作業をすればいいということ。

ちなみに行動を選択する力を担うのが、男性ホルモンテストステロン。これは、リスクを伴う選択や重要な決断をするときに分泌が増えると考えられているそうです。たとえばギャンブルをしている人の唾液を採取すると、増加しているというのです。そして、このテストステロンが自然に増加するのが、起床から2時間の間。ちなみに分泌量は男性の20分の1ながら、女性にもこのリズムがあるのだそうです。

そこで著者は、朝に目覚めてすぐ行動を決断することを勧めています。たとえば夜に買いたいものをネットで調べたりすると、人のレビューばかり読んでしまい、読むだけ読んだ挙句に決められなくなったりするもの。でも、休日などを利用して、この作業を朝一番に行えば、驚くほど早く買い物が終わるというのです。

つまり、これがテストステロンの作用。もちろんネットショッピングだけでなく、その日にやること、あるいはどちらの案を採用するかなど、「決めなければならないこと」を朝一番で決断してみるべきだということです。(93ページより)

自分で決める方法2. 朝日記を書く

日記は夜に書くものだと考えるのは、ある意味で当然。しかし行動の自己選択のために日記を利用したいのなら、朝に書くほうがいいそうです。夜に日記を書くと、自然に反省が多くなってくるもの。しかしそれは、事実より感情。「しっかりしなきゃ」「気持ちを切り替えよう」などと感情を書いていても、状況は改善しないわけです。ところが朝起きてすぐに日記を書くと、夜とはまったく違うのだとか。朝に書くことは、脳が「重要だ」と判断して残した記憶だというのです。

「悩んでいたけど、一晩眠ったらスッキリした」という経験は誰にでもあるもの。著者によれば、これには根拠があるのだそうです。脳は睡眠中にも休んでいるわけではなく、かなり忙しく動いているというのです。その働きのひとつが、情報の整理。いらない記憶を消去して、有益な記憶同士を結び合せるなどして脳に空き容量をつくり、翌日にまた新しい学習ができるように準備をしているということ。

就寝前に脳には、その日の記憶がたくさん詰まっており、なかには必要なものもあれば無駄なものもあります。特に「自信が持てない」「私は嫌われているかも」といった“事実ではなく脳内でつくられた感情”は無駄な記憶。つまり、これが詰まったまま日記を書けば、当然ながら反省文のようになってしまうわけです。そのため、「日記をこれからの行動指針として活用するならば、脳に情報処理作業をさせたあとで書くほうがはるかに得」だと著者は主張しています。(95ページより)

自分で決める方法3. 外食のとき、注文を10秒以内で決める

もしも「自分は優柔不断だから…」と考えているのなら、その考え方は捨てるべき。もともと優柔不断な脳などはなく、脳が選択しにくいように仕向けてしまった挙句、選択できなくなっていただけだというのです。そのため、脳が選択しやすくするためには、情報量を減らすことが重要だということ。そこで著者が進めているのが、外食の際、注文に時間をかけないことなのだといいます。メニューを見て10秒以内に注文を決めるといいというのです。

急いで注文して、出てきた料理がおいしくなかったら…と心配するかもしれませんが、熟考して注文したとしても「おいしくなかった」ということはあるもの。そこで、注文にかける時間と結果が見合わない場面を見つけ、その場面では「迷わず決める」ことを脳に経験させることが大切だということ。

同じように、日常の場面で頻繁に登場する些細な選択場面は、脳に「自己選択ぐせ」をつくる格好のチャンスだといいます。「性格を変えるのではなく、脳に入れる情報を変える」と考え、失敗のリスクが少ない場面で10秒以内に決めることを試すといいという考え方です。(97ページより)

自分で決める方法4. 着る服の色を限定する

多すぎる選択肢は、脳にとって難易度が高い課題。そこで、日常場面で選択肢を減らすことが重要。たとえば実践しやすいのが、着る服の色を限定すること。

「モノトーンだけ」「ネイビーだけ」「オレンジなど自分のテーマカラーだけ」というように限定することで、毎朝すんなり自己選択できることを脳に経験させることに効果があるというのです。選択しやすいように選択肢を減らしてみるという発想。脳に「すんなり選択」の経験を積ませることが、将来の大きな選択の準備になるというわけです。(99ページより)

自分で決める方法5. 好きなものを先に食べる、または後に食べる

「好きなものは先に食べる派? それとも後派?」などということが話題になることがあり、そんなときは多くの人が「私は○派。なぜなら…」と理路整然とその理由を述べることができるはず。

ところが脳にとってそれは、「どっち派?」と聞かれたから後づけでつくられた説明にすぎないのだそうです。そこで、そうした発想から脱却するため、好きなものを自分が普段思っていたこととは逆のタイミングで食べてみるべきだといいます。

重要なのは、脳に改めて「自分で行動を選択しなおす機会」を与えたということ、いままでは「そんなのはナシ」と思っていたことも、実際に行動して既成事実をつくってしまえば、脳はそれを「アリ」にするというのです。だとすれば、試してみる価値はありそうです。(100ページより)

自分で決める方法6. 月に1日だけ22時に就寝する

「大人なのに早く眠るなんて」と思われるかもしれませんが、著者によれば就寝時間も自動化された行動。いつもと違うタイミングをつくることで、脳に自己選択を経験させることができるというのです。

就寝時間はかなり無意識で決まっているもので、それは他人との会話からつくられることが多いのだそうです。そこで、「自分のなかでそういうものだ」という理由で行なっていることを、改めて意識的に選択してみることが重要だということ。

就寝時間を変えてみると、「これもアリなんだ」と感じることができ、なにげなくとっていた行動を選択しなおすことができるというのです。(101ページより)

自分で決める方法7. 歯磨きを反対側からする

歯磨きをする際、いつもと反対側から磨きはじめてみる。あるいは体を洗う順番を変えてみる。著者はそんなことを勧めています。

脳は一度行なった動作の記憶を保存し、そこから適切な動作を引っぱり出して命令するもの。でも、体が自動的に行なっている動作を変えてみれば、脳は自己選択を経験できることになります。歯磨きなど、上手にできないと成立しない作業を選び、はじめの動作をかえてみれば、脳は上手に成功させるように一生懸命工夫するわけです。そしてそうすることで改めて興味が湧き、その作業を自分の選択で充実させることができるということ。(103ページより)

自分で決める方法8. メンターをつくらない

「尊敬する人、影響を受けた人、メンターは誰ですか?」などと質問されることがありますが、他人に評価を気にする場面でこの質問をされると、そこで答えた人に自分の行動を選んでもらっているという考えが割り込むのだそうです。

「尊敬するのは両親だ」と答えれば、両親の顔色を伺って選択しているという後づけ理由がつくられ、「失敗」するとその責任の一端が両親にあるような気持ちが湧いてくるということ。しかし、それはただ他人に質問されてつくられてしまった反応だというのです。

もともと自分で選択していたことでも、他人から「なぜそれを選んだのか」「誰の影響を受けたのか」と追及されて無理やり答えれば、脳内では「他人に選んでも洗ったこと」になってしまうということ。

そこで、必要以上に「自分のメンターは○○」「○○を尊敬している」と口にするのをやめてみることが大切。それを口にするたび、脳は自己選択の機会を奪われてしまうということです。(105ページより)

自分で決める方法9. 好きなことについていっぱいしゃべる

私たちは嫌いなことや腹が立った出来事について、詳しく話をしてしまいがち。でもそれは多くの場合、他人に決められた行動がほとんどだといいます。大切なのは、自分が遺したいはずの記憶、内発的動機づけによる興味や楽しみについて積極的に人に話してみること。人に聞かせるというより、自分の脳に「自分は内発的動機づけをもとに行動しているのだ」といい聞かせるということ。そうすることで、脳は自分で行動を選びそこから学び続けるようになるというのです。(104ページより)

作業療法士という立場に基づいているため、とても説得力のある内容。それでいて難しい内容ではないので、無理なく読み進めることができるはずです。なかなか続けることができないと悩んでいる方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

メディアジーン lifehacker
2017年6月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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