『大災害時の自治体に必要な 機能は何か』
- 著者
- 阪神・淡路まちづくり支援機構付属研究会 [編集]/垂水 英司 [著]/亀井 浩之 [著]/畑 文隆 [著]
- 出版社
- 東方出版
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784862492845
- 発売日
- 2017/04/17
- 価格
- 880円(税込)
書籍情報:openBD
<東北の本棚>万一に備え反省と教訓
[レビュアー] 河北新報
被災地が一日も早い復興を果たすためには何が必要か。2016年9月、神戸市で阪神大震災や東日本大震災の復興に携わった公務員へのヒアリングが行われた。出席者のやりとりをまとめた本書は被災現場の人、予算、復興計画作りの実態を検証し、次の災害に備えた反省と教訓を伝える。
東日本大震災で宮城県南三陸町に派遣された兵庫県西宮市の職員は復興計画を作る際、避難所を回って丁寧に住民の意見を聞くことの大切さを痛感した。住民主体のまちづくりが肝要であり、行政が「上から目線」で計画を作る危うさを指摘する。
阪神大震災発生当時の兵庫県職員は、大災害の復興では「法律上問題になるケースは必ず出てくる」と強調。想定外の事態に直面しても迅速に対応の是非を判断できる専門的な機関が必要だと訴える。
ただ、憲法に「緊急事態条項」を新設する改憲論については慎重な意見が目立った。必要なのは国の権限強化より、被災した自治体がいかに主体的に復興を進められるか。法の整備、人や財源の確保など、平時から整理すべき論点が多いことを浮き彫りにする。
編者は1996年に発足した「阪神・淡路まちづくり支援機構」(神戸市)の研究部門。弁護士や学識経験者らで構成する。
東方出版06(6779)9571=864円。