パウロの言葉、それは人類へのギフト

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パウロ : 十字架の使徒

『パウロ : 十字架の使徒』

著者
青野, 太潮, 1942-
出版社
岩波書店
ISBN
9784004316350
価格
836円(税込)

書籍情報:openBD

パウロの言葉、それは人類へのギフト

[レビュアー] 図書新聞

 パウロがいなければ、キリスト教は世界宗教にならなかった。そんな彼の思想と生涯を生き生きと記述し、キリスト教にまつわる知識を飛躍的に向上させてくれる一冊だ。聖書を読んだことがある人なら分かると思うが、その意図するところは汲み取りづらい。「パウロの手紙は決して読みやすくはない」「ストーリー性がまったくないうえに、現代人のわれわれから見て、ほとんど実感の湧かない話題や議論が一方的に展開されているように思われる」と著者。しかし本書は、聖書と現代の懸隔を丁寧に埋めることで、パウロの問題意識の本質を明らかにする。「力は弱さにおいて完全になる」というパウロの言葉はますます輝きを増している。それは宗教を超えて受け止められるべき、人類へのギフトである。(12・20刊、一九八頁・本体七六〇円・岩波新書)

図書新聞
2017年6月3日号(3305号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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