思いの数だけ町はある

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いつか来た町

『いつか来た町』

著者
東直子 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569766959
発売日
2017/03/10
価格
734円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

思いの数だけ町はある

[レビュアー] 図書新聞

 表題だけ見て、なんだ、よくある町訪問の思い出話か、などと思うなかれ。たしかに本書に登場するのは、東京で言えば神保町、吉祥寺、江古田、あるいは観光地として有名な遠野や京都など、誰もが訪れたことのあるおなじみの町ばかりだ。しかし、同じ名前の、同じ町のはずなのに、未知の町の話を読んでいるような気持ちに襲われる。なぜか。それは町の光景や人々が細やかに描写されているだけでなく、その時その時の著者の感情や、個人的に見たテレビドラマや映画の記憶、さらに古典文学や近代作家の短歌の引用などが「町」に丁寧に組み込まれているからだ。そうだ、誰もが同じ光景を同じ思いで目にしているわけではない。読後には感性が研ぎ澄まされて、また違った町の顔を見出すことができるはずだ。(3・22刊、二七二頁・本体六八〇円・PHP文芸文庫)

図書新聞
2017年6月3日号(3305号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加