<東北の本棚>人材輩出力高め連携を

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地域と大学

『地域と大学』

著者
萩原誠 [著]
出版社
南方新社
ISBN
9784861243400
発売日
2016/12/09
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>人材輩出力高め連携を

[レビュアー] 河北新報

 地域再生や魅力ある地域づくりを実現するため、知の拠点である地方の大学が果たすべき役割は何か。全国の事例や大学トップへのインタビューを基に、社会貢献や地域との連携の在り方を論じたのが本書だ。東北からは、東北大と岩手大、山形大の関係者や取り組みを紹介している。
 学長へのインタビューで、岩手大の藤井克美元学長は東日本大震災後に大学の存在価値が高まったとし、「震災後は(中略)“地域に見捨てられたら終わり”という思いが求心力を発揮した」と述懐。産学官をはじめ多様な連携の必要性を指摘し、「比較的自由にネットワークのハブとしての機能を発揮できるのが大学だ」と訴える。
 地方国立大の存在意義を主題とする対談で、山形大の小山清人学長が、日本の大学が直面する問題や対応策について持論を披歴。「今の日本の大学は社会の動きよりも一歩遅れをとっている。(中略)20年30年先を見据えて、社会が期待する人材をきちんと輩出していかなければならない」と主張している。
 地域と大学が連携を深める上でヒントとなる事例として、東北大大学院経済学研究科地域イノベーション研究センターや岩手大三陸復興推進機構を取り上げた。連携を成功に導く条件として、関係者の危機感とコミュニケーション密度の高さ、橋渡し役となる人材の発掘・育成の3点を挙げる。
 著者は1945年鹿児島県いちき串木野市出身。京大法学部卒。経営倫理実践研究センター(東京)主任研究委員。地方公務員向け月刊誌「月間広報」に掲載した記事の一部を再構成した。大学や自治体の関係者らにとって指南書となりうる一冊。
 南方新社099(248)5455=2700円。

河北新報
2017年6月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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