『ルワンダに灯った希望の光』
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奇跡の復興の地で一人の行動が変えるもの
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
1994年、アフリカのルワンダで大虐殺が起こった。フツ族に殺されたツチ族の犠牲者は80万人から100万人と言われている。それから20年以上が経ったルワンダは「アフリカの奇跡」とも呼ばれる復興を遂げた。
津田久美子は、50代後半のエチオピア大使館勤務時代に一念発起し、コーヒー農民支援のため「NPO法人ハーベストタイム(HAT)」を立ち上げた。
ルワンダとの関わりはコーヒー産地の開拓のため2008年に訪問したのがきっかけとなった。
ジェノサイドから14年、コーヒー産業は軌道に乗っていた。
更なる支援のために注目したのが、実を取ったあとは切り捨てられるだけの大量のバナナの茎だ。これが利用できれば環境保護にもつながる。
すぐに思い浮かぶのは布や紙。布は繊維にしてから織るまで専門技術が必要だ。紙ならば手作業でできるのではないか。
地方では電気が引かれている家も少なく、水質もよくないルワンダで紙を作るヒントにしたのが、日本伝統の和紙を漉く方法だった。著者自身がコウゾの皮を煮るところから経験し修得、試行錯誤の末に準備した製作マニュアルを手に再訪したのが2011年。試作のためのワークショップから始め、JICA青年海外協力隊のサポートを得て現地の手工芸品販売協同組合(COVEPAKI)と協力の上、工房が作られ本格的な作業が始まった。本書を開くとそのバナナ和紙が1枚挟んである。ざっくりとした風合いがとてもすてきだ。
海外支援で付きものなのが日本人と現地の人との感覚の違いだ。アフリカンタイムに悩まされ、役人の横暴さに辟易し、三歩進んで二歩下がる日々だが、それでも人々に創作意欲が芽生え始めた。
きっかけはどうあれ、一人の熱情が周りを巻き込み誰かの暮らしを豊かにする。何か行動を起こしたくなる、そんな熱い一冊だ。