人間の熱と切なさに満ちた青春ミステリ『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良

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僕が殺した人と僕を殺した人

『僕が殺した人と僕を殺した人』

著者
東山 彰良 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163906430
発売日
2017/05/11
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

人間の熱と切なさに満ちた青春ミステリ『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良

[レビュアー] 円堂都司昭

 二〇一五年冬、アメリカで少年七人を殺した「サックマン」が次の犯行に失敗し、逮捕された。東洋人の犯人は、どんな人物なのか。物語は過去の台湾にさかのぼる。兄を殺されたばかりのユン、太っちょのアガン、喧嘩が強いジェイ。一九八四年の夏休みが、十三歳の少年たちを結びつけた。彼らはアガンの弟も交えてブレイクダンスに夢中になるなど、友情を深める。だが翌年、ある計画を決行しようとして、それぞれの人生が変わってしまう。

 東山彰良は、自身の出生地である台湾を舞台に青年の成長を描いた『流』で直木賞を受賞した。『僕が殺した人と僕を殺した人』は、場所だけでなく人物の発する熱において同作と通じるところがある。

「サックマン」は、死刑賛成派に加え外国人排斥を主張するプラカードも掲げられる状況で憎悪の的となる。大統領選の年のアメリカは、人種差別的傾向を強めていたのだ。一方、並行して語られる過去の台湾のパートでも、台中の分断が社会に影を落とす。トランプ大統領誕生後に再注目されたオーウェルのディストピア小説『一九八四年』が、本作のなかでもたびたび言及される。それは著者が、国家的な軋(きし)みの存在を意識してのことだろう。

 一方、少年たちは仲がよいだけでなく、時には感情がぶつかりあい、殴りあいもする。また、全員が家に問題を抱え、「おれたちはガキで、世界はガキの思いどおりになんかならねえんだ」と吐き捨てるしかない環境にいる。だが、大人になってふり返れば、こんな世界のなかで、少年時代の結びつきがある種のユートピアだったようにも感じられる。犯人は誰かという興味とともに、切なさに満ちた小説だ。

光文社 小説宝石
2017年7月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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