万城目学×京極夏彦「消えゆくものから生まれた物語」〈『パーマネント神喜劇』刊行記念対談〉

対談・鼎談

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パーマネント神喜劇

『パーマネント神喜劇』

著者
万城目, 学
出版社
新潮社
ISBN
9784103360124
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

消えゆくものから生まれた物語

ジャンルを超えて

京極 今回の新作も含め、万城目さんの作品は世の中ではファンタジーに分類されがちですよね。

万城目 そうですね。

京極 僕は全然ファンタジーだと思わないんですけどね。ご自分でどう考えられているのかは分からないんですが。

万城目 僕、ファンタジーとあまり言われたくないんですけれども。

京極 やっぱりそうですか。

万城目 そういうつもりじゃないんだけど、でも実際現実にいないものが出て来るのは間違いないから、まあ反論はしづらいんですが。

京極 でも、現実にいないものが出て来ればファンタジーという定義はちょっといただけないですよね。万城目さんの小説はファンタジーの作り方ではないと思うけどなあ。何をもってファンタジーとしているのか、僕にはちょっと分からない。万城目さんの小説って、地に足がついた設定から外れないですよね。

万城目 そうですね。あくまでも日常に何かが入り込んで来る感じですね。

京極 物理法則が変わるわけでもないし。社会は社会として厳然としてちゃんとあるし。現実に何か紛れ込んで来るわけだけれども、紛れ込んで来たもの自体に意味はなくて、紛れ込んだことによって起きる変化こそが多分肝ですよね。だから、一般小説だと僕は思うけども。

万城目 あまり境界がないんです。こればかりはそうなってしまうから仕方がない。

京極 小説って複層的な構造を持っているものだから、決して単層で理解できるものではないですね。万城目さんの小説は特に、ファンタジーとかSFとか、そういうお膳立てだけ強調されて紹介されるとちょっと違うんじゃないかと感じる。「もっと自由に読もうよ」と思うし、「僕は自由に読んだし」と言いたくなってしまう。ジャンルに囚われず自由に読んだ方が断然面白い。二読三読しても全然違う味になります。そんな読み方が出来る作品というのは、そう多くはありません。

新潮社 波
2017年7月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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