『小説のしくみ』 菅原克也著

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小説のしくみ

『小説のしくみ』

著者
菅原 克也 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
文学/文学総記
ISBN
9784130830706
発売日
2017/04/28
価格
3,888円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『小説のしくみ』 菅原克也著

[レビュアー] 安藤宏(国文学者・東京大教授)

 文学研究の世界で一九七〇年代以降、フランスを中心にナラトロジー(語りの構造分析)が流行し、八〇年代の日本の研究状況にも大きな影響を及ぼした。物語の形態を、語る視点、順位、情報量の偏差などから理論的に究明していく立場である。だが日本語と西洋語の性格の違い、概念自体の難解さなどもあり、流行は長く続かなかった。その後、文化研究などのうねりもあり、表現分析から状況論に力点が移行し、若手研究者の中で、テクスト分析への関心やスキルが低下しつつあるのではないか、との指摘もなされるようになってきていた。

 こうした中で本書は、かつて注目されたジェラール・ジュネットの方法論をあらためて評価している。題材にあえて日本の鴎外、太宰、芥川などの代表作が選ばれていること、日本語の特性を勘案した上で、難解な理論が長い時間のうちに血肉化されていること、などの点が好もしい。小説の「しくみ」の解明にあらためて関心が回帰しつつある近年の研究動向を象徴するものか。これを機に表現を読み解く面白さが少しでも認知されれば、と思う。

 東京大学出版会 3600円

読売新聞
2017年6月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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