消費者のニーズを掴むためには、まず「お困りごと」を突き止めよう

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ビジネス価値を最大化する思考法

『ビジネス価値を最大化する思考法』

著者
井上裕一郎 [著]/「元気が出る本」出版部 [編]
出版社
現代書林
ISBN
9784774516400
発売日
2017/06/17
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

消費者のニーズを掴むためには、まず「お困りごと」を突き止めよう

[レビュアー] 印南敦史

ビジネスに関することから社会問題まで、世の中にはさまざまな悩みの種が存在します。しかし、そうした「お困りごと」が身近であるほど「チャンス」だと断言するのは、『ビジネス価値を最大化する思考法』(井上裕一郎著、現代書林)の著者。

ビジネスの主導権が企業から消費者へと移っている状況下においては、消費者のニーズは「お困りごと」のなかにあるというのです。消費者の困っている問題を解決することが、新しいモノやサービスにつながるというわけです。

そんな著者によれば、困っている問題を解決して、新しいモノやサービスを生み出す方程式があるのだそうです。しかもそれは、世の中の「お困りごと」と自分の「強み」を掛け合わせるだけだという、とてもシンプルなもの。

世の中の「お困りごと」 × あなたの「強み」

この方程式で新しいモノやサービスが生まれます。新しいビジネスが生まれます。しかも、世の中の多くの人たちから共感が得られるような、人に役立ち、感謝される仕事が生み出せるのです。(「はじめに」より)

そこで本書ではまず最初に、世の中の「お困りごと」を見つける方法と、本質的な解決へのアプローチを示し、自分や自社の「強み」を見つける方法を公開しています。次いで「強み」と「強み」を掛け合わせ、世の中の「お困りごと」を解決するテクニックを紹介。さらには、革新性のあるモノやサービスがビジネス価値を高める理由も解説されています。きょうはそのなかから、CHAPTER 2「世の中はビジネスチャンスだらけである」に焦点を当ててみたいと思います。

「お困りごと」の本質をつかむ

自分自身、あるいは自分の身近な人たちが抱える「お困りごと」は、その他大勢の「お困りごと」でもあるのだといいます。つまりそれらは、世の中の「お困りごと」でもある可能性が高いということ。また、そうした事実を認めたうえで著者は、「共感」が人を動かすのだとも主張しています。そのため、「お困りごと」の解決方法から着想すると、「共感」される商品・サービスが生まれるというわけです。

「共感」を得るための仕組み・仕掛けづくりに力を注がなくとも、「共感」の輪が広がりやすくなるということ。いいかえれば、「お困りごと」と「共感」はとても相性がいいというのです。だからこそ、共感してもらえるモノやサービスを生み出すためには、困っている人のホンネを理解することが重要だという考え方。

ちなみにホンネとは、著者の言葉を借りるなら「本心のこと」。そして重要なのは、ホンネというものが、表面的な会話や思い込みの奥深くにあるという事実です。

まず、いちばん外側が「建前」「立場」「顔色うかがい」「やさしさ」「グチ」「ねたみ」「攻撃的な言葉」などで構成される「他者の層」。やさしくオブラートに包むように、本音をダイレクトには語らないわけです。また逆に、「グチ」や「ねたみ」を伴う攻撃的な言葉となることも。

次に、それに包まれるもうひとつ内側の層が「自分の層」。ここには「思い込み」や「レッテル貼り」が含まれるそうです。思い込みとはある意味で、思考が停止している状態。しかしレッテル貼りをやめれば、ひとりひとりのホンネが見えてくるもの。

しかし注意すべきは、浅い本音を聞くだけでは「お困りごと」の本質は見えてこないということ。それでは本質的な問題に気づくことができず、真の問題解決もできないというのです。そこで、「他者の層」「自分の層」の内側にある「真のホンネ」を深く探ることが重要な意味を持つわけです。(50ページより)

ホンネを探るとコンセプトが見えてくる

著者は仕事に着手するとき、「クライアントや潜在顧客の本音を探る」ことからはじめるそうです。まずは「感触をつかむ」ところからスタートするということで、頭で理解するだけでなく、肌感覚としてつかむイメージ。徹底的にホンネを探ることが重要であるため、ここに時間と頭を使うべきだというのです。

いわばこの作業は、建築でいえば基礎工事にあたる部分。基礎は表からは見えませんが、その建築のクオリティに関わるもの。基礎がおろそかになっていたため、すべてをやりなおすような事態にもつながりかねないわけです。

しかし近年、ホンネが見えにくくなってきたとも著者はいいます。SNSの普及により、話し手が「言質を取られること」に警戒心を持つようになってきたことが大きな要因。一方、ホンネを聞き取る側にも「思い込みを持ちやすい」「レッテルを貼りやすい」などの問題が生じているのだとか。しかし、そんな時代だからこそ、「ホンネを聞き取る技術」は、モノやサービスを考えたり、ビジネスをするうえでの「強み」になるということ。

いまの時代に求められているのは、人や社会に幸福をもたらしたり、増やしたりすることだと著者は考えているそうです。人は商品やサービスだけを見ているのではなく、「自分の人生にとってどう価値があるのか」を常に見ているというのです。

そこで重要な意味を持つのは、ホンネのなかにあるニーズを組み取り、その人の人生をより豊かにすること。それが結果的に、ビジネスの成功にもつながっていくということです。(56ページより)

ホンネを探る3つの方法

しかし実際のところ、本音の「お困りごと」を知りたかったとしても、人はなかなかホンネを明らかにしてくれないものでもあります。それどころか、ときにはグチやねたみを伴う激しい言葉になってしまうこともあるかもしれません。真のホンネとは、とてもつかみづらいわけですが、そこで著者は「人の本音を探る3つの方法」を紹介しています。自身もこの方法で、人のホンネを探っているというのです。

【人のホンネを探る三つの方法】

1. 徹底的に相手を知る

2. 生の声を聞く

3. 相手の表情やボヤキからホンネをキャッチする

(62ページより)

「徹底的に相手を知る」ために有効なのは、マーケティング調査の基本的な方法である「定量調査」「定性調査」であり、真のホンネを探るためにはどちらも必要だと主張するのです。理由は、調査に裏づけられたものでないと、経験や勘に頼らざるを得なくなり、真のホンネが探れないから。「KKD(経験、勘、度胸)」になってしまわないよう、注意が必要だということです。

定量調査とは、数値や量で表せる「定量データ」で集計・分析する調査方法のこと。あるルールにのっとってデータ集めをするわけです。「商品のSWOT(強み=Strength、弱み=Weakness、機会=Opportunity、脅威=Threat)を分析する」「商品のターゲットや企業のポジションを強豪と比較分析する」「消費者アンケートで『年齢』『性別』『購入目的』『購入頻度』『1〜5のいずれかに○をつけてください』などの質問でスコアをとり、数字で結果を出す」などは定量調査にあたるそうです。

たとえばショップや商品の定量調査であれば、知名度、購入頻度、購入目的、イメージ、商品ごとの売り上げ、お客さまの性別や年齢構成などを徹底的に分析して調査するということ。定量調査だけで人々のホンネはつかめないものの、ここで手を抜くとスタートを間違えることになるのだといいます。

一方の定性調査とは、個人の発言や言動など、数や割合では表現できないものの意味を、調査者が解釈すること。定性調査では「なぜ?」「どのように?」など、数値では具現化しづらい、個人の価値観や感情などを知ることができるそうです。代表的なものがインタビュー。グループインタビューで、「いま、困っていることはなにか?」を聞くなどは、まさにこれにあたるのだとか。

次に「生の声を聞く」こと。これは定性調査のインタビューに含まれる部分で、この生の声から、人々のホンネに近いものを得ることができるそうです。

そして3つ目の「相手の表情やボヤキからホンネをキャッチする」は、深層心理を探ること。たとえば新規プロジェクトの説明を受けながら、「大丈夫です!」と笑顔で答えている人が、心のなかでは「うまくいくはずがないので困っている」という状況があるとします。この場合は、「大丈夫です!」というのは表面上の言葉で、ホンネは「困っている」ということ。

ホンネを知るためにインタビューが有効だとはいうものの、「困っていることをアンケートで答えてください」「困っていることをインタビューで答えてください」と伝えると、相手が身構えてしまうためホンネを引き出すことは困難。「心の底では…」「どう考えても…」「実は…」といった部分は、なかなか表に出てこないわけです。

しかし、そのような隠れた気持ちは、表情やボヤキに表れることがあるもの。そのため、そこを見逃さずにキャッチすることが、本当の意味での「お困りごと」を知るためのポイントになるというわけです。いわば真の「お困りごと」をつかむには、人に寄り添い、人を深く観察することが欠かせないわけです。(62ページより)

著者は、ビジネスや組織全体を俯瞰したブランディング・商品企画・組織ビルディングを行っているというクリエイティブコンサルタント。そんな立場に基づく実体験が豊富に盛り込まれていることもあり、とてもわかりやすい内容になっています。さまざまな「お困りごと」をビジネスチャンスに転化させるために、ぜひとも読んでおきたい1冊だといえるでしょう。

メディアジーン lifehacker
2017年6月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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