「自己啓発書の第一人者」が教える、相手の心を開く方法

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「自己啓発書の第一人者」が教える、相手の心を開く方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ご存知の方も多いと思いますが、『「人を動かす」ために本当に大切なこと』(レス・ギブリン著、弓場 隆訳、ダイヤモンド社)の著者はアメリカの経営コンサルタントであり、自己啓発書の第一人者。その最後の作品である本書は、「人を動かす技術」がテーマになっています。

本書の目的は、リーダーシップやセールスの技術に関する最新トレンドを紹介することではない。本書で紹介しているのは、長年にわたる経験と努力にもとづく証明済みの普遍的なスキルである。

このプログラムは人とのかかわり方の基本の習得をめざしている。なぜなら、これこそが「人を動かす技術」を磨いて恩恵を受けるための近道だからだ。(17ページより)

著者によれば、成功を手に入れるための公式は「知識+活用=成功」。しかし、その公式を活用できるようになるには、まずその知識をふんだんに活用しなければならないと主張しています。知識は活用して初めて価値を持つという考え方。そして、このプログラムには3つのメリットがあるのだといいます。

1. あなたが知らない「人を動かす技術」を学べる。

2. あなたが学んだ「人を動かす技術」を覚えて強化できる。

3. 学んだ知識を活用して大きな恩恵を受けられる

(22ページより)

つまり、これは段階的な行動計画だというのです。そんな本書のなかから、きょうはLesson 5「相手の心を開く方法」をご紹介しましょう。

相手の心を開く方法

人を動かすとは、自分がしてほしいことを相手にしてもらうことだ。そのためには単純明快な論理を人間の本性に適用する必要がある。(86ページより)

人の心を開き、動かすためには、まず「相手がなにを欲しているか」を見極めなければならないのだと著者はいいます。そして、そのことを解説するうえで引き合いに出されているのは、意外なことに「牡蠣の殻を開けること」。

牡蠣の殻を開けることは、料理で苦労することのひとつ。やり方を知らないと、なかなか開けることができないわけです。力が足りなかったり、間違った場所に力をかけたりすると殻は開きません。でも、ハンマーを使うと砕けてしまう。ところが慣れている人は、手際よく牡蠣の殻を開けることができてしまいます。

人を動かすのも、それとよく似ているというのです。人の心を開く方法を知り、その方法を適切に用いれば、人を簡単に動かせるようになるということ。そして、まず大切なのは、「相手がなにを欲しているか」を見極めること。相手が欲しているものの例として、ここでは次の項目が示されています。

名声  評価  安心  満足  優越感

自尊心  お金  友情  善行

(87ページより)

人はみな、服装、食事、趣味、心情、ライフスタイルなど多くの点で異なっているもの。そこで、人を動かすためには、「相手がなにによって動くのか」を知る必要があるのだということ。相手がなにを欲しているのかがわかれば、相手を動かす方法がわかるわけです。

ただし、注意すべきポイントがあるそうです。私たちは、自分が欲しているのと同じものを相手が欲していると思い込む傾向があるというのです。でも、それではうまくいかなくて当然。どんな人にも、それぞれ固有の価値観や願望、好みがあるからです。(86ページより)

相手の関心を引く話題を追求しよう

そのため著者は、「相手が聞きたがっていることをいおう」と提案しています。いいかえれば、相手を動かすためにその人の願望を活用するということ。相手の関心事に興味を示し、同意し、つながりをつくると、人を動かすことがどんなにたやすいかに驚くはずだというのです。

相手の性格           相手の関心事

見栄っ張り     →     目立つこと

慈悲深い      →     人々の幸せ

プライドが高い   →     自分の功績

チームプレーヤー  →     協調性

倹約家       →     コスト削減と効率追求

心配性       →     安心感

認められたい    →     世間の承認

(90ページより)

人を動かすスキルとは、相手の関心事を満たすことだという考え方、そして人を動かすためには、4つの視点を大切にしなければならないともいいます。

1. 相手に意識を向ける。

2. 相手に質問をする。

3. 相手の話に耳を傾ける。

4. 相手をよく観察する。

(92ページより)

私たちがこれらのことをあまり実践していないのは、相手のことを気遣っていないからか、興味を持っていないから。その結果、「人を動かす技術」があれば得られるはずの多くの恩恵を逃してしまっているというのです。(90ページより)

第三者の言葉を交えて話す

単に自分の言葉でいうのではなく、第三者の言葉を交えて自分の主張を展開すると、説得力が増すのだそうです。著者いわく、これは「第三者のテクニック」といい、次の3つの方法で使うことができるのだとか

1. 第三者の発言を引用する

・「スミス社によると、それは市場で最高の品質だそうです」

・「専門家のビル・ジョーンズ氏は、この新素材こそが答えだと言っています」

・「未亡人のアンダーソン夫人は、生命保険のおかげで安心して暮らせると言っています」

2. 第三者の成功体験を語る

・「ジャクソン社は最初の1週間で8000ドル以上を売り上げました」

・「あなたの近所の人は、それで1万ドルを稼ぎました」

3. 事実と数字を使う

・「10万人がこの製品を使っています」

・「当社はあなたの友人や近所の人、約100人と取引をしています」

(以上94ページより)

自分の有利なようになにかを伝えると、相手はそれを疑いたくなるもの。それは人間の本性ですが、第三者の発言を使うと信頼性が増し、相手はそれを受け入れやすくなるというのです。別な表現を用いるなら、第三者の発言を使うと、それが証拠となって、相手を納得させることができるということ。そして信頼性が大きく向上し、より信頼され、説得力を増し、主張が受け入れられやすくなるというわけです。

例1 もし自分の車を1万ドルで売りに出し、買い手がその金額に異議をとなえたら、どう言えば説得できるだろうか?

△ 私は1万ドルが適正価格だと確信しています。

○ 中古車の情報誌にはこの車が1万1000ドルで掲載されていますし、中古車センターではこれより程度の悪い車が1万800ドルで売られています。

例2 もし自分の家を20万ドルで売りたいのだが、買い手は17万ドルしか出さないと言っているなら、どう言えば説得できるだろうか?

△ この家と同じぐらいの他の家を入念に調べましたが、これは妥当な価格です。

○ 2週間前にこの家を査定してもらったところ、20万ドルを超えていました。

(96ページより)

当然、どちらの例でも後者のほうがいいというわけです。(93ページより)

ここからも推測できるとおり、「人間関係のバイブル」だといわれる本書の内容はいたってシンプルかつ実用的。そのため、「人を動かす」ことについて悩んでいる方の大きな力になってくれることでしょう。

メディアジーン lifehacker
2017年6月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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