『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』
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【話題の本】『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』
[レビュアー] 藤井克郎
■文体をまねてパロディー化
書かれている内容はただ一つ、カップ焼きそばの作り方だけ。それを太宰治に夏目漱石、ドストエフスキー、紀貫之と、古今のさまざまな文体をまねてパロディー化しており、6月7日の発売翌日に重版決定、5万部突破という驚異の売れ行きを示している。
そもそもは著者の一人、菊池良さんが昨年、ツイッターでつぶやいた村上春樹風カップ焼きそばの作り方がインターネットで話題を呼び、書籍化へとつながった。神田桂一さんとそれぞれ50本、計100パターンの文体が収められているが、面白いのは作家だけではないことで、プロのブロガーにユーチューバー、果ては求人広告に迷惑メール、女性向け自己啓発エッセーなんてものもある。
編集を担当した宝島社の九内俊彦さんによると、著者2人とも文学に精通しており、文体が染みついている作家も多かったという。「ただ改めて読み込んで、体に憑依(ひょうい)させてから書いていったみたいです。とにかく書店員さんの食いつきがよく、そこからパッと広がっていった感じですね」と話す。
現役の作家にも許可は取っていないというが、「ご本人からの反応はまだありません」とのことだった。(神田桂一、菊池良著/宝島社・980円+税)
藤井克郎