自分の「半径5メートル」を最適化して、職場の生産性を向上させよう

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「半径5メートル最適化」仕事術

『「半径5メートル最適化」仕事術』

著者
佐々木希世 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799321140
発売日
2017/06/10
価格
1,650円(税込)

自分の「半径5メートル」を最適化して、職場の生産性を向上させよう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「半径5メートル最適化」仕事術 おしゃべりな職場は生産性が高い』(佐々木希世著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、アメリカ・日本・イタリアとさまざまな環境・職場で働き、のべ20年の社会人生活を送ってきたというキャリアの持ち主。そのような経験から、欧米のビジネスパーソンは人間関係のストレスをあまり感じていないということに気づいたのだそうです。そして、そのベースにあるのは、一緒に働く人同士のコミュニケーション法なのだとか。

アメリカやイタリアの人は職場におけるリレーションシップ・マネジメント、すなわち同僚との関係構築を、日本人よりも上手にやっているのです。その結果、信頼をベースにした働きやすい職場になり、楽しみながら仕事ができる。それによって成果もきちんと出るのです。(「はじめに」より)

注目すべきは、個人が効率的に成果を出すためには、「自分の席から半径5メートル以内、つまり同じ部署で毎日顔を合わせる数名との関係づくり」がカギになるという考え方。著者はこれを「半径5メートル最適化」と呼んでいるそうで、本書においては、著者が海外と日本の職場で学んだ「半径5メートル最適化のノウハウ」を明かしているわけです。そして、ここに書かれていることを実践すると、次のようなことが起こるそうです。

・同僚との信頼関係が生まれる

・周囲の人に好かれ、尊敬されるようになる

・周囲の理解と協力を得られやすくなる

(「はじめに」より)

さらには自分だけでなく、職場の人が同じように、よりよい関係構築に努めることで仕事が進めやすくなり、職場全体の生産性向上に結びつくのだといいます。そんな本書のなかから、きょうは第3章「半径5メートルによい風を吹かせる」に焦点を当ててみましょう。

一日数回は声を出して笑う

著者は日本に戻って働きはじめたとき、職場で「ずいぶん大きな声で笑いますねえ」といわれることが多かったのだといいます。実際、笑い声が大きく、よく声を出して笑うと自分でも認めています。

というのも、アメリカの職場では「笑い」を大切にするそうなのです。仕事中でも気のきいたジョークで人を笑わせる人は、尊敬されるのだとか。なぜなら、笑いが人の気持ちを明るくし、気持ちをほぐし、コミュニケーションの潤滑油となると考えられているから。

しかも、笑うと自分自身がすっきりするもの。そして、笑い声があがる職場には活気が生まれるといいます。たしかに、全員が黙って机に向かい、真面目なトーンで会話をするだけの職場では少し寂しく、ちょっと退屈になってしまうかもしれません。

でも現実的に、仕事で楽しいことはたくさんあるはず。雑談で笑いたくなることもあるでしょう。そこで著者は、声を出して笑ってみることを勧めています。といっても大声である必要はなく、自然のまま声を出して笑えばいいだけのこと。そうすれば同僚が集まってきて、みんなで笑えば仲間意識が生まれ、さらに活気ある職場になるはずだというのです。(54ページより)

「褒めボキャ」を10個持つ

著者によれば、イタリア人はとにかく褒め上手。実際、イタリア語には褒め言葉のボキャブラリー、すなわち「褒めボキャ」の数がとても多いのだそうです。そしてイタリアの人々は、それを本当にマメに使うというのです。

概して欧米人は褒め上手です。アメリカにも褒め文化はあり、大げさなジェスチャーを交えて賞賛する点はイタリアと共通していますが、褒める「ポイント」が異なります。

アメリカではまずは「モノ」を褒めます。「そのシャツ、いいね」「時計、素敵ですね」といったように、具体的な持ち物を褒める会話が仕事前にアイスブレイクの基本です。対してイタリアでは「コト」を褒めます。会話の表現や仕事の成果、料理の出来栄えなどに対して、ここぞとばかりに称賛を寄せるのです。(60ページより)

イタリアに行く前の著者は、「誉め殺し」的で過剰な褒め言葉は、使うのも使われるのも苦手だったといいます。ところが実際にイタリア式の賞賛を経験すると、その習慣化した「褒めボキャのシャワー」はとても心地よいものだったのだそうです。褒め言葉が回っていると、人間関係がよくなり、「自分も同じように相手の褒めどころを探そう」という気持ちになるというのです。

そうはいっても実際のところ、「直接褒めるのは苦手」という人も少なくないはず。また、「褒めボキャ」の多いイタリア語の表現を、そのまま日本語に訳すことも楽ではないでしょう。

でも、多様な表現でなくても、高尚ないい回しでなくてもいいのだと著者は主張します。「すごい!」「いいねえ!」「さすが!」「グッとくるよ」といったシンプルな言葉で大丈夫だということ。ポイントは、これらをきちんと頭の引き出しに入れ、意識してしっかり口にすること。口ごもってしまっては、せっかくの褒め言葉も台なしだというわけです。

「褒めボキャ」の数に加えて大事なのは、「心から褒めること」、そして「相手にしっかり伝わること」。欧米の人はジェスチャーを使って感情豊かに表現しますが、あのくらいでちょうどいいのだといいます。

「誰を」「どんな言葉で」褒めるとやる気を出してもらえるか。それを考えることは相手をよく知ることでもあります。「この人にはこの一言が刺さる!」というフレーズが分かったら、ぜひメモしておきましょう。そんな「褒めボキャ」を10個用意して、頭の引き出しに入れたら準備完了。あとはとにかくマメに褒める!(63ページより)

「褒めボキャ」をストックして使いこなせるころには、職場の雰囲気が和んだものになっているはずだといいます。(58ページより)

意見をいいたければ、まず「聞く耳」を持つ

「サーバントリーダーシップ」とは、従来の「リーダー」のイメージである「目標に向かってメンバーを引っぱる」のとは異なり、「メンバーを交えながらゴールを一緒に目指す」タイプのリーダーシップのかたち。これまで当たり前と考えられてきた「主導するリーダー」に代わり、今後はこちらが主流になるともいわれているのだそうです。

そしてサーバントリーダーのいちばん重要な資質は、「傾聴する力」にあるのだそうです。部下やチームメンバーの話にていねいに耳を傾け、共感し、力づけ、彼らが自律的に目標に向かえるようにサポートする。その過程でメンバーも互いの意見に真摯に耳を傾け、サポートしあうようになれば、働きやすい職場も実現するということ。これは「半径5メートル最適化」のひとつの方法でもあるのだといいます。

人の話を「聞く」、さらにいえば「聴く」。誰かの発言を言葉どおりに理解するだけではなく、発言の理由・背景・思いに頭をめぐらせて「聴く」。必要があれば質問して、さらに詳しく「聴く」。注意深く人の話を聞くことは相手の信頼を得るだけでなく、自分の情報収集力や分析力を高めます。そして、そうした良い「聞き手」の意見は周りからも尊重される。つまりは同僚の「聞く耳」のレベルまで上げてくれるのです。(68ページより)

そこで、自分の意見を通したいなら、まずはまわりの話をていねいに「聴く」ことから始めてみるべき。それが著者の考え方です。(64ページより)

「知らないことは人に聞く」を文化にする

社会人としての経験を積み上げていくと、「教えてもらえますか?」と知らないことを人に聞くには勇気が必要になってくるものです。また、職場にはさまざまな思惑が渦巻いているだけに、素直に「知らない」と口にすることが難しいときもあるもの。でも、だからこそ、謙虚に「教えてください」と質問できることは、社会人としての美徳のひとつだと著者は記しています。

「今さら人には聞けない」という気持ちがあるなら、まずは知らないことの下調べをしましょう。それでも分からないところを人に聞けばいい。こうすれば「自分でできること、やるべきことはやった」という自信がつきます。

相手に疎ましそうな表情をされたら、「忙しいようなら、後であらためてお時間をいただけますか」「他の方に聞いたり資料にあたったりしたほうがよければ、教えていただけますか」など、タイミングや手法を変えて聞くのもいいでしょう。(73ページより)

著者は「知らない」よりも「知らないままでいる」ことが恥ずかしいとも書いていますが、この言葉には強い説得力があります。いつでも「知らないことは人に聞く」ことを心がけるといいかもしれません。(70ページより)

本書で紹介されている考え方は、すぐにできそうなものから、すぐには無理かもしれないものまでさまざま。しかし難しく考えず、「できそう」なものはすぐに使い、「無理そう」なものは頭の隅に置いて、条件や環境が変わった時に試してみればいいそうです。つまり、気軽に実践することができるわけです。職場の生産性を高めたい人は、手にとってみてはいかがでしょうか?

メディアジーン lifehacker
2017年6月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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