『異才、発見!』 伊藤史織著

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異才、発見! : 枠を飛び出す子どもたち

『異才、発見! : 枠を飛び出す子どもたち』

著者
伊藤 史織 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004316596
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『異才、発見!』 伊藤史織著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 学校に適応できないけど、人並み優れた才能をもっている子供たちを集めて「未来のエジソン」を生み出すプロジェクトが東大で発足。というニュースを少し前に聞いて、感心しながらも、一抹の不安を感じた。エリート育成のための英才児(ギフテッド)教育を想起したためだ。

 本書は、そのプロジェクトの取り組みを紹介したものだが、発足当初、マスコミが趣旨を歪(ゆが)めて伝えてしまったために、さきの私のような誤解をした人が多かったらしい。取り組みの真意は、決して英才児育成プロジェクトではなく、「ちょっと変わった子」にもちゃんと居場所を与えようというものだった。

 生きたカニを解剖して食す。原野でフォークとナイフを作る。アウシュビッツに出かける。そこには教科書も学習目標もない。万能である必要もない。たった一つのことしかできなくても、その才能をただ伸ばしていく。

 「明るく、楽しく、元気よく」でなく、「暗く、静かに、ひとりで」も許される場がある。それだけで「ちょっと変わった子」をもつ親にとっては大いなる福音と言えるだろう。

 岩波新書、780円

読売新聞
2017年6月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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