<東北の本棚>地域性と固有性を探究
[レビュアー] 河北新報
東北に伝わる民俗芸能のうち田植え踊り、山伏神楽・番楽、シシ踊りを中心に地域性や文化的特性について調査、研究した。民俗学研究者の著書がかつて発表した論考を4部構成でまとめた。
1部は田植え踊りの本質に迫る。水田稲作の豊作を祈願する芸能。本来の姿は、小正月に田植え踊りの一行が個人の家々を訪れて踊り歩いた。秋田、青森両県には見られない。秋田の踊りは田遊びの一種、青森の場合は雑穀の豊作も祈る芸能という。
岩手と宮城で田植え踊りの存在を確認できるのは17世紀後半。新田開発の進展に伴い発生したとみる。山形内陸部は18世紀に入ってからが多い。やませによる冷害でしばしば飢饉(ききん)が起きる太平洋側から広まったのではないかと推測する。
山伏神楽・番楽に関しては花巻市や由利本荘市、山形県真室川町で現状を分析し、伝承の課題を探った。保存団体同士の交流やネットワーク化の重要性を指摘する。
シシ踊りについては東北の北部と南部を比較検討した。4部で東北の祭礼行事に触れ、中世~現代の祭りの時代的諸相と今日的意義を考察した。
著者は1949年東根市生まれ。東北文教大短大特任教授。
清文堂出版06(6211)6265=1万584円。