『神父さま、なぜ日本に?』 女子パウロ会編著

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神父さま、なぜ日本に?

『神父さま、なぜ日本に?』

著者
聖パウロ女子修道会 [著]/女子パウロ会 [編著]
出版社
女子パウロ会
ISBN
9784789607834
発売日
2017/05/21
価格
1,296円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『神父さま、なぜ日本に?』 女子パウロ会編著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

今を生きるザビエル

 遠藤周作の『沈黙』がマーティン・スコセッシ監督により映画化され、日本では今年公開されて話題になったことは記憶に新しい。十七世紀の日本に、キリスト教布教のために渡り来たイエズス会の二人の宣教師の苦難を描くこの小説を初めて読んだとき、私はまだ多感な年頃だった。「葬式仏教」の自分が何だか急に恥ずかしくなり、でもこれほどに人の魂をえぐる「信仰」というものは恐ろしくて近づき難く、しばらくのあいだモヤモヤしたのを覚えている。

 今でもキリスト教に対しては、チャペルの結婚式に招かれ、祭壇に立つ神父様を見て「映画みたい」と思うくらいの距離感しかないけれど、自宅の近所に教会が二つあるのは知っている。散歩や買い物でその前を通りかかると、法衣を召した方をお見かけすることがある。

 本書には、長く日本に滞在し、そうした町の教会や学校の教壇から教えを説いてこられた十一の修道会に所属する十五名の神父様たちが登場する。一般に流通する書籍ではあるが、迷わず手に取るのはまず信徒の方ばかりだろう。それでも本欄でご紹介するのは、表紙に掲載されている神父様たちの笑顔があまりにも素晴らしいからだ。皆さんご高齢なので、素敵なおじいちゃまたちのお顔が並んでいるのだが、この方たちはただの好々爺(こうこうや)ではない。日本という国を選んで「福音のあかしに生きる」ことを決めた宣教師なのである。その在日年数は半端なく、たとえば『沈黙』と同じイエズス会のアルフォンス・デーケン神父は、一九三二年生まれで来日は一九五九年のことだ。半世紀以上、この国の高度成長期以降の良いことも辛(つら)いことも、みんな共に体験しておられるのだ。

 ザビエルといえば、一般的には歴史の教科書に登場する名前でしかないが、本書のなかには今を生きるザビエルの末裔(まつえい)がいる。神父様たちにとって「日本」はどんな国なのか。その問いかけに答える肉声は優しく温かい。

 ◇じょしぱうろかい=イタリアで創立されたカトリックの女子修道会。1948年から日本でも宣教活動を行う。

 女子パウロ会 1200円

読売新聞
2017年7月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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