『スペース・オペラ』 ジャック・ヴァンス著

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スペース・オペラ

『スペース・オペラ』

著者
ジャック・ヴァンス [著]/浅倉久志 [訳]/白石朗 [訳]
出版社
国書刊行会
ISBN
9784336059222
発売日
2017/05/25
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『スペース・オペラ』 ジャック・ヴァンス著

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

星々巡る歌劇団の冒険

 例えば「スペース・オペラ」といって、まず思い浮かぶのは『スター・ウォーズ』のような宇宙を駆けめぐる冒険大活劇だが、本書はちょっと違って……我らが音楽文化の最高峰「オペラ」を宇宙のみなさんにお届けして文化交流をと、トンデモな企画をたくらんだ地球人たちのドタバタSF小説となれば、ほとんどダジャレみたいなタイトルである。

 宇宙船に歌劇団員とステージまで積み込んで、目指すは惑星ルラール、だけどそれだけではもったいないと、途中のあの星この星にも立ち寄っては住民たち(宇宙人です)にオペラを披露するのだが、そのすばらしさが彼らに通じる……ワケがない。あっちこっちでトラブル続出の珍道中、はてさてデイム・イサベル率いる「スペース・オペラ」一座の運命やいかに!

 著者は米SF界の重鎮、異世界を描いて『竜を駆る種族』などが知られ、本書にも表題作に加えてちょっと切なくなるような異世界ものが四編収録されているが、もうひとつの得意技がギャグ満載の豪快にしてはちゃめちゃ破天荒な物語、『宇宙探偵マグナス・リドルフ』と『天界の眼 切れ者キューゲルの冒険』に本書と続いた国書刊行会「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」はそのテの作品を集めて、イッキ読みの楽しさおもしろさである。因(ちな)みに「マグナス・リドルフ」はSFユーモアミステリの逸品、昨年のミステリベストテンもにぎわせて、それもそのはず著者はかのエラリー・クイーンのゴーストライターのひとり、ミステリ作家としても評価の高い小説巧者なのだから。

 米文学伝統のホラ話の気配もうれしくて、あんまりマジメに評するのも不粋ではある。梅雨空一掃に、初夏の暑気払いに、とにかく痛快きわまる本書なのだが、ところで「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」はこれで完結らしいけれど、残念、もっと読みたい。三冊あわせておススメです。浅倉久志、白石朗訳。

 ◇Jack Vance=1916~2013年。米生まれ。ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞生涯功労賞などを受賞。

 国書刊行会 2400円

読売新聞
2017年7月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加