『ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ』 田中雅子著

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『ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ』 田中雅子著

[レビュアー] 旦敬介(作家・翻訳家・明治大教授)

 世界中で奴隷制が合法である場所はほとんどなくなったが、似たような境遇に置かれて人身取引されたり性的に搾取されたりしている人は現在でも数千万人いて、むしろ拡大しているとされる。実は日本も、人身取引被害者が五万人ほどいるとされ、十分な取締や対策が行われていない国として注視されている。

 その点で、ネパールは、だまされてインドの買春宿やサーカスに連れていかれたり、縫製工場などで働かされたりする被害者が多い一方、犯人が厳しく処罰されている点で高評価されている。また、防止対策や被害から脱した人(サバイバー)への支援も充実しているという。なかでも、サバイバーたち自身が作った団体が重要な役割を果たしている。被害者は家族や出身コミュニティから拒絶される場合があり、社会への復帰には繊細さのある多様な支援が必要になるからだ。そのメンバーのライフストーリーからは、人が売買被害に遭う状況が単純でなく、教育のない人ばかりでもないことがわかってくる。人身売買に限らないさまざまな人権被害者サポートへのヒントがある。

 上智大学出版発行 1250円

読売新聞
2017年7月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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