<東北の本棚>達人から学んだ生き方

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

点と魂と スイートスポットを探して

『点と魂と スイートスポットを探して』

著者
小山 実稚恵 [著]/梶山 寿子 [編集、著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784048929394
発売日
2017/05/02
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>達人から学んだ生き方

[レビュアー] 河北新報

 著者は仙台市出身で、日本を代表するピアニストの一人。音楽専門誌に2年間にわたって連載した、各界の第一線で活躍する人たちとの対談を基に、新たに書き下ろしたエッセーだ。
 副題は「スイートスポットを探して」。テニスのラケットやゴルフのクラブには、そこでボールを捉えると最も効率よく飛ばせる「点」がある。これをスイートスポットと言う。
 対談を進めるうちに、著者はどんな競技や仕事、創作活動にも才能や経験、やる気などを最大化し、最高の結果を引き出せるスイートスポットがあることに気付いた。対談での発見を振り返りつつ、達人たちが語った極意を、ピアノ演奏や人生にどう生かせるか、つづっていく。
 元スキージャンプ選手の原田雅彦さんは、わずかな瞬間を捉えて踏み切ることを「点のジャンプ」と表現した。雪の状態、気象条件は刻々と変わる。ピアノの状態も湿度や温度の影響を受け、音の響きが大きく変わる。どんな状況でも結果を出すための心構えは共通している。
 女優の大竹しのぶさんは「本当に悲しいと思って泣けば、声はかれることはない」と話した。そんな声は観客の心に届く。ピアノ演奏も正確無比なだけでは人を引きつけられない。結局大事なのは「気持ち」「魂」なのだと述べる。
 スイートスポットを使いこなすために「脱力」が大切なことも、プロ野球ダイエー監督の工藤公康さんや、将棋の羽生善治さんとの対談から解き明かした。投手は脱力することで力を十分に発揮できるが、「脱力は難しく、その重要性に気付く人は少ない」(工藤さん)。羽生さんからは適度に力を抜いて脳をリラックスさせ、「良い緊張」を保つことの大切さを学んだ。
 著者が12年間、24回にわたって続けるリサイタルシリーズ「音の旅」や、東日本大震災を経験したことで気付いた音楽の力、音楽家の果たすべき役割などについても触れている。
 KADOKAWA03(3238)1854=1620円。

河北新報
2017年7月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加