お子さんに読んで聞かせて 関西ノリの新感覚絵本
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
「七福神を巡る大阪ツアー」ではなく「七福神が大阪ツアーをする」絵本です。人々に福を授けるため、何かと忙しい七福神。その年に一度のお楽しみが、七人集まっての慰安旅行。そのてんやわんやを大阪の落語作家のくまざわあかねの文章とあおきひろえの絵で綴ります。
毘沙門(びしゃもん)、大黒(だいこく)、恵比寿(えびす)、弁天(べんてん)、福禄寿(ふくろくじゅ)、布袋(ほてい)、寿老人(じゅろうじん)と順に登場しますが、ここが絵本の強みで一目瞭然、七福神がどういう姿なのか子供さんも容易に理解するでしょう。それぞれの性格、いわゆるキャラも書き込んであり、全員揃ったところで大阪ツアーへの出発です。
大阪は水の都、まず船に乗ります。ガイドは案内スル代さん、このベタな名前に子供さんはきっと大ウケすることでしょう。出航間もなく、最新式の船が宝船に変身します。金銀財宝に米俵を積み上げ、真ん中に大きく「宝」と書かれた帆がスルスルと上がります。神様ですから何でもできるのです。七福神と言えば宝船ですから、ここは欠かせないところです。もっとも橋が低くてあわてて帆を下ろしたりするのですが。
一行は日本一長い天神橋筋(てんじんばしすじ)商店街で買い物や買い食いを楽しみ、天満宮へ。そうです、久々に天神様を訪ねるのです。ふと見ると熱心に願い事をする若者が。聞くと落語家であり、一行は彼を応援すべくすぐ近くの寄席、天満天神繁昌亭(はんじょうてい)へ。この辺はくまざわあかね嬢の面目躍如です。
翌日はUSJでひと騒動起こし、恵比寿さんの提案で通天閣にアメリカ生まれのビリケンさんを訪ねます。感激したビリケンさんはこう言います。「昔、七福神のみなさんに私を加えて『八福神めぐり』が流行したこともあるんですよ」と。
それとなく知識が入ってきます。お子さんを膝に乗せて絵を見せ、後ろから読んであげてください。必ずや喜ばれるでしょう。そしてこのコンビによる絵本、何やらシリーズ化の予感がします。