まずは要点を明確に。「知的に見せる」伝え方のポイントとは?

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まずは要点を明確に。「知的に見せる」伝え方のポイントとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「いいたいことはあるのに、頭がぐちゃぐちゃになってしまう」

「そもそもなにをいっていいのかわからない」

コミュニケーションが苦手であることを自認し、このような悩みを抱えている方は決して少ないはず。そこでご紹介したいのが、『頭がこんがらがってうまく話せない時に試してほしい 知的な伝え方』(出口 汪著、大和書房)です。「知的な印象」を主要テーマとして掲げ、“相手から「わかりやすい」といわれる伝え方”について解説しているのです。

現代ほど「伝え方」が重要な時代はありません。

SNSなど、インターネットを駆使したコミュニケーションツールの発達により、「他者に自分の意見を伝える機会」は大幅に増えました。(中略)そんな現代では、論理的に、的確に、わかりやすく考えを伝える技術が何よりも重要です。コミュニケーションの機会が多く、伝えることに苦手意識を持つ人が多いからこそ、ストレスなく、スムーズなコミュニケーションをとることができれば、あなたは間違いなく周囲から一目置かれ、重宝されるでしょう。(「はじめに」より)

そんな本書から、「論理力を駆使した知的な話し方」をするためのテクニックを紹介した第2章「知的に見せる話し方」に焦点を当ててみたいと思います。

頭に浮かんだことをそのまま話さない

「うまく話せない」「意図が伝わらない」という人の特徴に、「頭に浮かんだことを、思いつくまま話す」というものがあるそうです。本来、人の思考は移り気なもの。誰かと話しているときでも、まったく関係のないことを考えてしまったりするのは仕方がないことでもあります。しかしそれでも、「自分が考えたことを、そのまま言葉として発してはいけない」と著者はいいます。相手が傷つくようなことはもちろん、会話の趣旨に直接関係のないことは発言すべきでないということ。

理由は簡単で、そんなふうに伝えたとしても、相手には「なにをいおうとしているのか」がわからないものだから。自分にとって、それぞれのトピックスは関連づいているのかもしれないけれども、相手からすれば「?」。よほど察しのいい人でなければ、内容を理解することは難しいわけです。そこで、発言する前に1回深呼吸をし、頭のなかを整理するクセをつけるといいそうです。

思い浮かんだことをそのまましゃべってしまう人は、どこにでもいるものです。ひとつのことから別のことを連想し、さらにいろいろな連想がふくらんでいき、最終的には当初とはまったく別のことを話していたりするわけです。こうしたおしゃべりは基本的に楽しく、しかも「ブレインストーミング」としてアイデア創出に役立つ場合もあるでしょう。

ただし当然ながら、上司への報告やレポート、プレゼンにおいてこうした話し方は厳禁。特にビジネスの場で相手に伝えたいことがある場合は、「絶対にこれだけは伝えたい」というテーマを事前に決め、「そのためにどうすればいいか」を考えることが大切だというのです。言葉がうまく出てこないのであれば、事前に箇条書きで紙に書き出しておくという手段も。

もし、別の話題に触れる必要があるときは、「話は変わりますが」というような言葉を挟み込み、話題が転換することをきちんとアピールする必要があるといいます。(62ページより)

まず要点を明確にする

やたらと前振りの世間話が長い人、過剰に敬語を用いて馬鹿丁寧に話す人は、「相手と打ち解けたい、失礼がないようにしたい」という思いからそうした話し方になっているのかもしれません。が、それは逆効果になっていると著者は指摘しています。よかれと思って世間話をした結果、相手の貴重な時間を浪費し、不快な思いをさせてしまうということ。

論理的な話し方のコツは、「自分の話の要点(伝えたいこと)を明確にし、そこからブレないこと」。無駄を省き、話題の「キモ」だけを明確にすることで、あなたの意図や考えを明確に伝えることです。

そしてこれは、関係のない世間話や、心のこもっていない敬語などよりも、よほど相手のことを尊重した態度なのです。(68ページより)

いちばん伝えたい「大切なこと」さえ明確にしておけば、あとは1.裏づけとなる具体例やデータを挙げる(イコールの関係)、2.対比する事例を挙げる(対立の関係)、3.理由を示す(因果の関係)など論理の三原則を用いて説得力を持たせるだけ。要点は、絶対にブレてはいけないものだと著者は訴えています。

ちなみに会話では、文章よりもさらに「要点」を意識し、筋道を立てて話す必要があるそうです。そうでないと、いわゆる「いった・いわない」問題が起こってしまう可能性があるから。人間は、忘れっぽかったり、見栄っ張りだったりする生き物。だからこそ「いった・いわない」を防ぐためにも「要点を踏まえた話し方」をすることが重要なのだという考え方。それができれば、しっかりした人だと評価されるといいます。(68ページより)

会話は「接続語」が9割

「つまり」「しかし」「したがって」「なぜなら」「そして」などの接続詞は、相手に物事を理解してもらうためにはとても大切な言葉。接続語には「単語と単語」「文と文」をつなぐ働きがあるわけですが、ただつなげるだけでなく、「論理的構成」を示す機能を持ってもいるといいます。例えば「つまり」という言葉が現れた場合、そのあとには必ず「それまでと同じ意味」を示す要素がくることになります。

あの犬に飼い主はいない。つまり、野良犬だ。(72ページより)

この場合であれば、「飼い主はいない」と「野良犬」という2つの同じ意味内容を「つまり」でつなげているということ。すなわち「つまり」は「イコールの関係」を示す接続後だということ。よって会話中に相手が「つまり」といったら、それはいままで相手が話した内容の要約であることの合図だというわけです。

寝る間も惜しんで勉強した。しかし試験は不合格だった。(73ページより)

こちらは、「寝る間も惜しんで」と「不合格」をつないでいるので「対立の関係」。会話中に「しかし」が出現したら、それまでと対立する内容がくることを示しているということです。

このように、相手へのシグナルになっているのが接続後。「つまり」であれば、「いまから、これまでの話をしますよ」という合図。「したがって」なら「因果の関係」。だからこそ、そういった合図を逐一送ってあげることで、相手もその話題に意識を集中して話を聞くことが可能に。そればかりか、接続後の次にくる話題も、なんとなく予想できるでしょう。あらかじめ内容を把握しておけば、より内容の理解を深められるのです。(72ページより)

「この人、賢くないな」と思われてしまう話し方

ビジネスパーソンであれば、謝罪や失敗の報告をしなければならない場合もあるものです。そして、それは避けられないことでもあります。しかし著者によれば、そんなとき「うまくリカバーをする優秀な人」と「信頼を失ってしまう人」には、それぞれ「伝え方」に特徴があるのだそうです。そこでこの項目では、「賢くない伝え方」の代表例が紹介されています。

まず、賢くないことの代表例は「言い訳・取り繕い」。当然のことではありますが、それでもつい言い訳してしまうのが人間。懸命に取り組んだのに失敗してしまった。そんな自分をわかってもらいたいと、言い訳したくなるわけです。しかしそれでも、本当に賢い人は、決して言い訳をしないものだと著者。

それどころか、そういう人は失敗や謝罪といった不利な状況でこそ自分の株を上げるもの。言い訳や取り繕いをせずにリカバーできれば、それが優秀さをアピールすることになるというわけです。

難しいのは、当人が真摯に反省して「ミスがおきた原因」を報告しているつもりでも、それが他人には言い訳や責任逃れに聞こえてしまうこと。当人が反省していればいるほど、原因を詳細に説明しようとするものです。ところがそれが、「自分の責任ではない」といっているように聞こえてしまうわけです。

まず重要なのは、「そのミスに、自分がどう関わっていたのか」を明確にすること。「最初に自分の非を認める」「ミスの原因に自分がどう関わっていたのか」「どうすればそれを防ぐことができたのか」「今後、同じ失敗を繰り返さないためにどうすればいいのか」を順序立てて説明することが大事だという考え方です。

誰でも必ず失敗はするものです。だからこそ、その原因を明確化し、自身の非を認め、今後の予防策を提案する。それこそが生産的な伝え方であり、自分自身への信頼をぐっと高めることにつながるということです。(77ページより)

ご存知の方も多いと思いますが、著者は大学受験の現代文のカリスマ講師として、数々の著作を送り出してきた人物。そんなこともあって解説もわかりやすく、そして実用的です。「伝えたいことをうまく伝えられない」と悩んでいる方にとっては、本書がきっと役立つのではないかと思います。

メディアジーン lifehacker
2017年7月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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