『新渡戸三代』小久保純一著
[レビュアー] 産経新聞社
日本人の精神を知る手がかりとして世界的なベストセラーとなった『武士道』を著し、国際連盟事務次長として世界の懸け橋となった新渡戸稲造。スケールの大きな人間性の源は、稲造の祖父・伝(つとう)と父・十次郎から受け継いだ開拓者精神にあることが、三代それぞれの人生描写から明らかにされる。
不毛の広大な原野・三本木原(青森県十和田市)を米どころに変えようと、盛岡藩士の伝は当時の平均寿命を超える60代で開拓に挑んだ。十次郎はそれを助け、水路建設からまちづくりへと総合開発の域に高めた。無私の生き方の美しさを改めて教えてくれる。(文芸社・600円+税)