なぜホリエモンは読まれ続けるのか
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
38万部を突破した『ゼロ』(ダイヤモンド社)や、30万部に迫る売上を記録した『本音で生きる』(SBクリエイティブ)など、多くのベストセラーを出している堀江貴文の最新作『多動力』が発売から1カ月で16万部を超えるベストセラーとなっている。
『多動力』が売れている理由の一つに、リズム感よく読みすすめられる本のつくりというのがある。刺激的な言葉でつづられたトピックが冒頭にあり、次の頁の頭でその発言のポイントを示す。そのあとに4頁ほどエピソードが書かれ、最後の1頁に「やってみよう」リストがある。時間のない人はエピソードを読み飛ばして、トピック、ポイント、リストだけを読めばいい。リズム感よく読み進められるこのような構成が、確実に速くなっている現代人の時間感覚にマッチしたのだろう。感覚的な読みやすさがヒットした要因の一つである。
彼の著作は文庫化されたものを含めて100冊近い。そこで発信しているメッセージは一貫している。常識にとらわれるな、自分の時間を取り戻せ、などがそうだ。世間で常識とされていることの中には、根拠がなく時代に即していないものが多い。彼はそういった非効率なことをみな否定する。寿司屋の修業を例にとり、情報や技術を得るのに貴重な時間を使うなと説く。時間は有限なのだから、有効に使わないといけないという。そのような言説は至極まっとうなのだが、「バカ真面目の洗脳を解け」というように、空気を読まない(または空気を読んだうえで、あえてそれを無視している)過激な表現を使っているので、反発を覚える人も多いだろう。
また、とにかくやれ、考えるよりも先に動け、走りながら考えろ、ということも常に言っている。本書でも「あれこれ考えるヒマがあったら、今すぐ、やってみよう!」という言葉で締めくくっている。ビジネス書は読んだだけで満足をしてしまう人が多い。そうではなくいかに実践するのかというのが大事だ。この本にある「やってみよう」リストを参考にして、そこに書かれていることを一つでもいいからぜひ実践してほしい。